ずっと気になっていた、ノラコヤにもともとあった大きな柿の木。 その実は、甘いようで渋く、渋いようで甘い微妙な味なのだが、せっかくあるのでまずは干し柿にしようと一念発起する。 里の友人が貸してくれた高枝切り鋏を持参し、柿もぎに挑んだ。 実家にも、とても立派な柿の木があった。 秋になってそれを収穫するのは父の仕事で、採った柿を、父が焼酎につけて渋抜きし、よくおやつや食後に食べていた。 実自体は小さいものの、甘くて、私は実家の柿の実が大好きだった。 実家はもう跡形もなく消滅したけど、柿の木と桜の木は残っている。 会えば懐かしいような、でも胸の奥がツーンとして悲しみに似た痛みも感じる。 同じ木ではないけれど、こうして私は再び柿の木とご縁ができた。 そのことが、ものすごく嬉しい。 友人が貸してくれた高枝切り鋏は、切った枝をばさりと下に落下させず、枝を掴んだまま下まで降ろすことができる。 何度か操作ミスで実をいきなり落下させてしまったものの、概ね無事に地面まで運ぶことができた。 それでも、鋏が届くのは下の方だけで、上の高い所になっている実は、どうしたって届かない。 できる限りの範囲で収穫した。 向こうには、うっすらと富士山が見えている。 こういう作業を、楽しんでやっている自分がまたおかしかった。 その場で葉っぱを切り落とし、ヘタのところの枝をTの字に揃える。 まだまだ木にはたくさんの実が残っているけど、大ザル一杯分の収穫があり、持ち上げるとずっしりと重い。 これを山小屋に持ち帰って、今度は一個ずつ皮をむいて。 あまり考えると、気が遠くなってしまう。 本当は、すぐにやるつもりじゃなかったのだ。 でも、天気予報を見たら、この後二日間晴天が続く。 このタイミングを逃すと、間に出張が入ってしまい、まただいぶ先になってしまう。 結局、もう、このままやっちゃえ! と気合を入れ、夕飯後、皮むきの作業に取りかかった。 むき終えた柿は一個ずつ紐に通し、更に熱湯に5秒間つける。 こうすることで、雑菌の繁殖がおさえられ、腐らない。 確かに、去年もそうしたけど、ダメになった柿は一個もなかった。 それを、お天気の良い日は外に干して風と光に当てる。 そうすると、渋かったはずの柿が甘くなるのだ。 小さい頃、干し柿はそんなに好きな食べ物ではなかったけど、最近はやけに干し柿がおいしい。 干し柿は、冷凍保存もできる。 そして今日は、産直に寄ったらついカリンを見つけてしまい、反射的にカゴに入れていた。 柿が終わったら、次はカリン。 秋は実りの季節なので、毎日毎日忙しいのだ。 この時期は、休む暇がない。 ついに、明日の朝の最低気温が1度の予報。 でも、今日同様、きっとピカピカの青空だ。 干し柿作りには、もってこい。 たくさん、日光浴してもらおう。 冬が近づき、少しずつ、山が膨らんできた。…