朝起きると、みぞれ混じりの雨が降っている。 まだ心の準備ができていなかったので、びっくりした。 しばらくすると、雨が雪に変わり、またもやびっくりする。 でも、よく考えれば、これが例年通りかもしれない。 山小屋に住んで最初の冬は、確か10月に最初の雪が降ったと記憶している。 今年は、初雪の瞬間に立ち会うことができて、なんだか嬉しい。 雪が降る様子を見ながら、小豆を炊いた。 ふと思いつき、初めて、小豆を炊くのに圧力鍋を使ってみる。 2回普通の鍋で茹でこぼし、後は圧力鍋で一気に仕上げる。 なーんだ、これでよかったのか。 今までの時間をかけたコトコトは、なんだったのだろう。 圧力鍋を火にかけていたのは、たったの5分。 それでふっくらと、おいしいあんこが出来上がった。 もちろん、時間をかけてコトコト煮るのもいいと思う。 でも、なんでも時間さえかければいい、というのでもないような気がする。 私は、20代の前半に初めて味噌を手作りしたとき、茹で上がった大豆をすり鉢で潰した。 そうやって手をかけた方が、おいしくなると勘違いしていたのだ。 でも、大豆をすり鉢で細かくするのは思った以上に大変で、以来、手前味噌を作ろうとは思わなくなった。 再び味噌を手作りするようになったのはだいぶ経ってからで、ベルリンで知り合った友人に教えられ、ブレンダーを使ってみたのがきっかけだった。 あんなに大変だった大豆を潰す作業があっという間に終了して、拍子抜けした。 なんでもかんでも手作業でやればいいわけではない、と気づいたのは、このときだ。 昔の人だって、すり鉢を使っていたのはその頃はそれしか方法がなかったからで、もしブレンダーがあったら、当然それを使っていたと思う。 洗濯にしろ掃除にしろ、なんでも手作業でやればいいなんてことはなく、手で洗うより、洗濯機を使った方がずっと効率がいいし綺麗になる。掃除も然りだ。 道具も、使わなければ意味がないのだ。 私は圧力鍋を持っているのだから、もっともっと活用した方がいい。 その方が時間短縮になって、ガスの消費も抑えることができるのだし。 という訳で、次回から、小豆を炊くときは圧力鍋を使うことにする。 仕事を終え、お昼、バッハを聴きながら食事をしていたら、雪がどんどん本降りになった。 大きなモミの木にも、地面の苔の上にもみるみると雪が積もって、幻想的な世界が広がる。 バッハの曲は、青空にも雨にも曇り空にも夜空にも調和するけど、なんといっても雪景色との相性は抜群だ。 まるで、曲に合わせて雪が踊っているようで、美しすぎる。 雪が降ると、堂々と胸を張って山小屋に引きこもれるのがいい。 冷凍食品も乾物類も備えは十分なので、ちょっとやそっと山を下りられなくても、大して困らない。 まだタイヤも履き替えていないから、危険をおかして車を走らせるのは御法度だ。 今日は温泉に行けないかな、と思っていたら、本降りの雪は一瞬だけで、午後からみるみる青空になる。 魔法のような白い雪も消えてしまった。 午後、いつも通りお風呂に行き、帰ってから急いでゆりねを散歩に連れ出す。 外の気温は、4度。 ゆりねもさすがに寒いらしく、トイレを済ませるとさっさと山小屋に戻ろうとする。 そろそろ、おでんが恋しくなってきた。