高雄に2泊、福岡に1泊という、なかなかの強行スケジュールで、トンボ帰りでお山に戻ってきた。 久しぶりの海外旅行で、粗相がないか緊張したけど、なんとか全ての工程を滞りなくこなせた。 まるで、スタンプラリーのような旅だった。 高雄市立図書館は、日本円にして100億円を費やした、地下1階、地上8階建ての立派な図書館だった。 建設にあたっては、世界中の図書館を視察して、参考にしたという。 隣接する五つ星ホテルとも渡り廊下でつながる、度肝を抜く構造だった。 夜になると、きれいにライトアップされる。 その10周年イベントに、招待していただいたのだ。 図書館と聞いていたので小規模なイベントを予想していたら、とんでもなかった。 会場は500人入るホールで、その席がいっぱいに埋め尽くされていた。 トークのお相手をしてくださったのは、台湾で旅のガイドブックなどを出版しているdatoさんで、なんと、台湾で『食堂かたつむり』が翻訳されて出版される際の編集を担当してくださったとのこと。 お土産にとくださった京都のガイド本なんか、私より全然詳しくて、しかもとてもセンスがいい。 次回京都を訪ねる時は、datoさんのガイドを参考にしたい。 トークの後は、サイン会。 抽選で選ばれた100人の方が、それぞれお手持ちの本を持ってきてくださった。 本当は、500人の方全てにサインをしたかったけど。 ちょうど一週間前に、『椿ノ恋文』の翻訳が出たばかりで、その本を持ってきてくださる方も多かった。 このシリーズの装丁は、本当に素敵。 通訳さんが入ってくださったので、日本のサイン会と同様、お一人お一人の方とお話をすることができた。 海を超えた物語が、異国の地で、現地の言葉で、ちゃんと伝わっていることを痛感する。 台湾の読者の方と直接お会いできた私は本当に幸せで、まさに夢のようなひと時だった。 『ツバキ文具店』や『ライオンのおやつ』を読んで、実際に鎌倉や瀬戸内に行ったという読者の方も非常に多く、びっくりした。 改めて、台湾と日本との距離が本当に近く、隣人であることを実感した。 私の父は、台湾で生まれた。 父自身にその頃の記憶はほとんどないようだったけど、祖母はよく、台湾の人たちにとてもよくしてもらったと話していた。 子どもの頃、祖母が住んでいた仙台の家に遊びに行くと、祖母は必ず大皿にビーフンを作って待っていた。 台湾の人から作り方を習ったというそのビーフンは、絶品だった。 いくらでも食べられた。 だから、私は勝手に台湾に対して親近感を抱いていた。 東日本大震災で日本が窮地に立たされた時も、誰よりも多くの支援を寄せてくれたのは台湾の人たちだ。 台湾の人たちの明るさと優しさは、一体どこから来るのだろう。 台湾もまた、日本同様、少子高齢化や子どもの不登校など、同じような問題を抱えている。 それでも、日本と違うのはそのことに前向きに積極的に取り組んで、問題を解決しようとしている点だと思う。 ジェンダー問題に関しても、徹底的な教育の力で、生きづらさを抱えている人の割合は日本よりずっと少ないのではないかと想像する。 多様性を認める姿勢は、日本が見習わなくてはいけないもののひとつだ。 自由や民主主義を自分たちで守っていかなくては、という気概も、一人一人から感じた。 ちなみに、台湾での投票率は70%を超える。 多様性を大切にする姿勢は、図書館にも現れていた。 まず、図書館を利用する子どもたちにもアドバイザーになってもらい、彼らの意見にちゃんと耳を傾けている。 点字の本も、たくさんあった。…