シンデレラストーリー
週末、海と空をT家へと送り出し、私とゆりねは速やかに森へ。
ノラコヤへ連れて来る時、この世の終わりのように車で絶叫していたのが嘘のように、今回は二匹とも、すんなり車に乗せられた。
まるで、お迎えに来たハイヤーに乗り込むみたいにスマートな対応だった。
移動中も鳴かず、大人しくしていたらしい。
前回は初めての経験でパニックになったけど、今回は2度目なので、大丈夫だったのか。
ヤギは、本当に賢い。
T家に移ったメェたちは、ものすごく恵まれた環境で、とても穏やかに暮らしている。
送られてきた彼らの写真を見て、心底ホッとした。
海も空もリラックしている。
この選択ができて、本当に良かった。
ヤギを共同で飼うのは、なかなかいいアイディアだと思う。
冬になったら、またペアでノラコヤに戻ってくる。
覚えていてくれるか、それだけがちょっと不安。
天気予報を見て、雨を気にしなくて良くなった、と気が楽になったのはほんの一瞬で、やっぱり雨マークを見ると、海と空は大丈夫だろうか、と心配になってしまう。
でも、大丈夫なのはわかっている。
車で30分走ればいつだって会いに行けるのだし。
海にも空にも、最高のヤギ人生を謳歌してほしい。
本当に、彼らはシンデレラストーリーだ。
ゆりねは、また元の山小屋暮らしに戻って、少しホッとしているかもしれない。
最後は、かなりの至近距離までメェたちに近づくことができた。
ゆりねはしっぽをブンブン振りながら低姿勢になって、遊ぼう! 遊ぼうよ! と必死にメェたちにアピールしたが、いかんせん相手はヤギなので、彼らに犬語は全く通じなかった。
海も空も、貯金箱みたいな目で、この子は誰? 何言っているの? という冷めた態度でゆりねを見下ろしていた。
でも、そんなお誘いは、間違っても森にいる鹿にはとらない。
ってことは、ゆりねはやっぱり海と空を仲間だと感じたのだろうか。
次回再会した時にどういう態度を取るのか、楽しみだ。
森は今、美しい新緑の季節を迎えている。
まだ、水仙が咲いているのだから、びっくりだ。
この冬の寒さがこたえたのか、去年植えた針葉樹を2本、枯らしてしまった。
でも、そのうちの1本、プンゲンストウヒはもしかすると復活するかもしれない。
針葉樹の中には、植えられた環境が合わないと、一度自ら葉っぱを落として、それからまたその環境に合わせて葉っぱを出すというのだ。
どうか、そうであってほしい。
動物も植物も、私にとっては大事な家族の一員だもの。
いよいよ、山小屋で迎える4度目の夏。
どんな出会いがあるのか、楽しみだ。