木こりさん

大体朝の9時くらいに木こりさん夫妻がやってくる。
同じ村人で、とても感じのいいご夫婦だ。
おいしいお茶やお菓子を物々交換するのが恒例になっており、私もつい、これは木こりさんがお好きなのでは? と想像してプレゼントするのが楽しみになっている。

高所での作業ゆえ、集中力を要する。
木に登って作業するご主人と、その作業を地上でサポートする奥さん。
息がぴったりだ。

普段はお昼前後に作業を終了するのだけど、先週、仕事量が多い日があって、いつもより労働時間が長くなった。
気温も急に上がったりして、少し無理をされたのだと思う。
翌朝、電話があり、「ごめんなさい、ふたりとも体調を崩してしまって」とのこと。
「本当に情けなくて、ご迷惑をかけてしまって」と涙ながらに訴えるので、もうこちらはこれっぽっちも迷惑など被っていないし、本当にご無理のないように時間をかけて作業をしていただければいいのです、とお伝えした。

とても繊細な仕事内容だし、状況がいつもとほんの少し違うだけでも、体はそれを敏感に感じ取って、警報を鳴らすのだろう。
もしその体の声を無視して無理をしたら、ますます大変な結果を招く。
体が仕事道具なので、とにかく日々体のメンテナンスを怠らず、養生しなくちゃいけない。

私が森暮らしで大切にしているのは、
「できることだけ、やる。できないことは、しない。」
という、とてもシンプルなこと。

本当に当たり前のことなんだけど。
なんでも自分でやろうとするのは、逆に効率が悪くなる。
だから、自分でできないことは、潔くできる人にお願いしてしまうのが、森で気持ちよく暮らすコツのような気がする。

つい頑張ってやりすぎてバッテリーをゼロにしてしまうと、ゼロからフル充電するのには結構時間がかかる。
でも、少し余力を残しておくと、また次の日スムーズに仕事が始められる。
今、私が夢中になっている庭仕事も、義務じゃないから楽しいのであって、これが義務になったら、面白さが半減する。

ようやく、コブシの花が開いた。
この花が咲くと、やっと春本番だ。
森のカラマツたちも、昨日あたりから、小さな小さな新芽を出し始めている。

同じ道でも、昨日と今日では色彩が変わるし、朝と夕方でも、緑の見え方が違う。
今は、グレーとモスグリーンを混ぜたような、本当に本当に淡い緑色で、これが日に日に色を濃くしていく。
里に暮らす友は、この微妙な春の色が一番好きなのだとか。

ゴールデンウィーク中は、木こりさんたちがいらっしゃらない。
お会いできないのは少しさみしいけれど、どうか、じっくりと体と心を休めてほしい。
また伐採木が新たに増えたので、私はせっせとそのお世話をして過ごそう。
水仙が咲き、原種のチューリップも咲き、クロッカスももうすぐ咲きそうになっている。

花たちは、お日様が出ると、本当に笑う。
これが、今朝の発見である。