月の満ち欠け

毎晩、布団に入って電気を消してから、あれ? 外の電気消し忘れたかな、と思う。
でも、確かに全部消している。
そっか、木々の葉っぱが落ちたから、夏よりも月の光をまぶしく感じるのだ。
特にここ数日は、上弦の月で外がほんのり明るく見える。

今夜は、皆既月食。
温泉から戻ったら、蝋燭を灯して、お月見をする。
せっかくなので、シードルを開けた。
音楽は、大音量でオペラをかける。
しばらくすると、まん丸だったお月さまが、徐々に左斜め下の方から欠け始めた。

半分くらい隠れたところで、外に出る。
まだ7時前なのに、真夜中の暗さで、星がいっぱいいっぱい輝いていた。
あんまり山小屋から離れるのは不安なので、道の途中で空を見上げる。
気温はほぼ0度。
でも、空気が冷たく乾燥していて、気持ちいい。
そう、これこれ。
私にとっての冬の空気は、まさにこんな感じが理想的だと思う。

小屋の近くまで戻って、しばらくじっと見ていたら、どこからか、ザク、ザク、と獣の足音がする。
おそらく鹿だろう。
鹿はたいてい集団で活動しているけれど、よく、オスの一匹鹿がこの辺りを単独で行動しているので。
向こうも何かを察したのか、動きを止めて様子をうかがっている。

こんなにじっくりと月の動きを観察したのは、生まれて初めてかもしれない。
今、お月さまは薄い黒のベールで覆われている。