シュネー

雪が降っている。
天気予報に雪マークが出ていたから、朝から何度も窓の向こうの景色をチェックしていた。
午前11時になるちょっと前、小雨に若干色をつけたような雪がちらちらと見受けられるようになった。
それがお昼くらいになると、スノードームの中の雪みたいに、細かい氷のかけらが宙を舞うようになり、それから一時間後くらいに、本格的に降り始めた。
このまま降ると、少し積もるかもしれない。

雪を見ると、なんだかホッとする。
やっと冬が来た。

ゆりねのお散歩にもお風呂にも行けそうにないので、午後は雪を見ながらの読書だ。
お正月にどうしても読みたくて、西加奈子さんの『夜が明ける』を取り寄せた。
ここ数日、ずっと彼女の世界に浸っている。
続きが気になって、夜、布団に入っても眠れないなんて、久しぶりの感覚だった。

ものすごい、圧倒的な熱量で、この物語を書き上げたのだろうと何度も思った。
無駄な文章どころか、無駄な文字、無駄な句読点ひとつないほどに、完成されている。
すごいなぁ。
本当に本当に、すごい。尊敬する。
胸の奥に疼く強烈な「叫び」を表現するのに、これだけの文字が必要だったんだな。

最後のページまで読み終えた今、心の中で拍手喝采が鳴り止まない。
自分で装画も描いて、この人はなんて才能豊かなんだろう、としみじみ思った。

雪は、まだ降り続いている。
マンションの中庭で、子供達が楽しそうに雪と遊んでいる。
梢にはたっぷりと雪が積もって、窓の外は雪景色だ。

ドイツ語で、雪はSchnee(シュネー)。
久しぶりに、思い出した。

あけまして、おめでとうございます。
今年も、よろしくお願いします。

2022年が、光あふれる希望の年となりますように!

追記)
その後、雪国育ちの血が騒ぎ、年賀状を出しに行くのを口実に、外に出る。
窓からの雪景色を見ているだけでは物足りなくなり、ベルリン時代のヤッケを引っ張り出した。
(ちなみに、ヤッケもドイツ語です。)
足元にはモンゴルの極寒にも耐えてくれた最強ブーツを履き、帽子に手袋と、完全防備で出発する。
もちろん、傘は差さない。
雪だから、払えばすぐに落ちるので。
それよりも、両手を解放し、バランスを取りながら歩く方が大事。

いい雪だった。
しっかりと小粒にまとまり、歩くたびに、キュッキュッと音がする。
年賀状をポストに投函しても、もう少し雪道を歩きたくて、遠回りした。
防寒したので寒くはなく、むしろ背中が汗ばんでくる。
冬タイヤに変えてない車が、ノロノロと道路を走っていた。

今夜は、鱈ちり鍋。
タラにも、雪がついている。