ぬくもり

昨夜、ほんの数十分の間にわーっと雪が降り、今朝は一面雪景色。
2階の窓からヤギ小屋を見下ろすと、ウークーが石の上でピッタリ寄り添っている。

水が凍っていないかとポットのお湯を片手に見に行くと、今度は三角ハウスの入り口で、ぷっくりとした水枕みたいな海のお腹に頭を預け、空が完全に寝入っていた。
夜の間に雨や雪が降ると、やっぱり睡眠が妨げられるのだろう。
そういう日は、決まって陽が昇ってからもウトウトしている。

空の寝顔があまりに無防備で、しばし見入った。
どうやら二匹は、どっちかが寝ている時はどっちかが起きて、時々役割を入れ替えている様子。
この二匹を一緒に引き取って本当に良かったと、空の寝顔を見ながらしみじみ思った。

ノラコヤにいる間は、私とゆりねも、毎晩ピッタリ寄り添って眠っている。
それが、里暮らしの一番のご褒美かもしれない。
最初は自分のスペースで寝ていても、途中でゆりねが必ず私の布団に入ってくる。
正直、山小屋にいる時のように別々に寝た方が、お互いに睡眠の質は上がると思う。
でも、それとこれとは別なのだ。
ゆりねと体をくっつけて寝ていると、えも言われぬ幸福感に満たされる。
猫と暮らしている友人も、それが幸せだと口を揃える。

結構な体重の犬や猫を腕枕したり、お腹に載せたりしていると、そのせいで筋肉痛や肩こりになったりするのだけど、やめられないのだ。
スヤスヤと寝ている生き物の眠りをちょっとでも妨げたくないという一心で、自分の体を動かさずにいる人も多い。
私も、たとえ腕が痺れても、ゆりねを抱っこし続けてしまう。

ゆりねは、クークーと人間並のいびきをかいたり、夢を見ながら体を動かしたり、むにゃむにゃと寝言ごときを呟いたりする。
布団の中で暑くなるといきなり外に出ようとするし、また寒くなると中に入れてと催促する。
でも、そういうのも全部全部ひっくるめて、最高の幸せだ。
生き物のぬくもりというのは、ギフトそのものだと思う。
そのせいで、冬場の眠りはつい長くなってしまいがちけど。
朝起きる頃には、オキシトシンで、心も体もたっぷりと満ち足りている。

海と空は、一年前から較べると、だいぶ人懐こくなった。
特に海は、私がブラシを持って近づこうものなら一目散に逃げていたのだ。
それが今では、ブラシを持ってヤギ小屋に入った途端、自分から近づいてきて、ブラッシングをせがんでくる。
そういう時の海は、私の足の間に頭を突っ込んで、じーっと動かない。
どんなにブラッシングをしても、もういいよ、とは態度で示さず、もっともっとやってとおねだりする。
その姿が、ものすごくかわいい。

今日は、海の爪切りに初挑戦した。
剪定バサミを使って全部の爪を切るのだが、これがなかなか難しい。
近日中に、空の爪も切ってあげなくちゃ。
爪切りに関しては、海よりも空の方が難易度が高いだろう。

今日、新たな発見があった。
夕方、ヤギ小屋で戯れるウークーたちを見ながら、夕飯の準備をしていた時のこと。
大きなクシャミが出た。
なぜか私は、数年に一度、ひどい花粉症の症状が出てしまうのだが、今年はまさにその当たり年らしい。
先週がピークでそれはそれは悲惨な日々だったが、今週になっても、突発的なクシャミが出る。

クシュン! と私の口から大砲が飛び出した瞬間、海も空も急に警戒モードになり、周辺の様子を伺ったのでる。
ノラコヤの窓は閉めているし、距離だって数メートルは離れているので、そんなに大きな音ではなかったはずなのだけど。
振動が伝わるのだろうか。

ゆりねも、私がクシャミをすると、速やかに私から離れて行ってしまう。
あの、突発的な破裂音が、動物には脅威に感じられるのだろうか。
だからなるべくクシャミをしないよう、普段から気をつけてはいるのだけど。
クシャミ事件から数分後、ヤギ小屋の前を一匹のキツネが平然と通り過ぎて行った。
クマじゃなくて、ホッとする。
ぼちぼち、彼らも目を覚ますのだろうか。

今夜は、モリモリとパスタが食べたい気分だったので、菜の花と帆立貝のパスタを作った。
以前いただいて、冷凍しておいた帆立の旨煮があったので。
菜の花って、大好き。
春の味がする。
早く、外のテーブルで富士山を見ながら食事がしたい。