雪の上を歩く
山に関する本を読んでいたら、むくむくと山に登りたくなった。
毎年そう。
冬ごもりの時期は読書の時間が増えるので、そうすると読む本に影響されてしまうのだ。
と言っても、ハードな雪山登山は無理なので、とりあえず雪の上を歩きたい!と。
で、よく考えたら私は山の中に住んでいるわけだから、歩こうと思ったら、いくらでも歩けるのである。
ただ、ふだんはゆりねとの散歩がメインなので、歩く道はほぼ決まっているし、それほど長い距離も歩けない。
ここのところ、連日晴れが続いている。
雪景色と青空の組み合わせは本当に気持ちよく、今日はまさしく絵に描いたような完璧な空。
絶好の雪原ハイク日和なので、いつもより重装備にして出発した。
ちょっと前に雨が降ったせいで、路面がスケートリンクのようになっている。
だから、アイゼンをつけるか悩んだのだが、今回はストックを持つことにした。
いつもゆりねを連れて歩いている道でも、雪に覆われるとまた違った景色に見える。
森の中の小道を抜けて、池に行き、更に上の方まで歩いてみる。
池から先は、初めて足を踏み入れる領域だ。
清々しくて、何度も空を見上げてはため息をつく。
富士見岩まで行ったら、本当に富士山がものすごく綺麗に聳えていた。
地面にあぐらをかき、しばし瞑想する。
太陽の温もりを肌で感じた。
冬の森には、完璧な静けさと完璧な美しさに満たされている。
帰りは、ちょっと道に迷ってしまい、遠回りをした。
何度か滑って転びそうになるのを、ストックが助けてくれる。
アイゼンをつけてくればもっと歩きやすかったかもしれないけど、ストックがあるだけでも、十分役に立つ。
山小屋に戻ったら、変な気分になった。
歩いているときはそれほど感じなかったけど、急に非日常から日常の世界に戻ったようで、頭の切り替えがうまくできない。
冷凍のカレーうどんを温めている間、我慢できなくなってノンアルコールビールを飲む。
雪見ビールも、これまた良し。
明後日はいよいよ、ノラコヤへ荷物を移す。
あともう少しだ。
今夜は、満月だろうか。
温泉からの帰り、ほんのり桜色に染まる雪山の上に、まあるいお月さまが浮かんでいた。
真っ白い雪の上に、梢の影が長く長く伸びている。
満月付近の冬の森は、まぶしいくらいだ。
少しずつ、陽が長くなってきた。