春たけなわ
どうやら、今年は筍が豊作らしい。
連休中、2日連続で筍を頂戴した。
しかも、採れたての初々しい筍だった。
新鮮な筍は、刺身にして生でも食べられるほど。
あく抜きも、米糠を入れずにただ茹でるだけでいい。
まずは、私にとっては定番である、豚肉と白滝との炊き合わせ。
お財布に余裕があれば、豚肉を牛肉に変えてももいい。
それに、筍ご飯と筍汁。
下の硬いところはサイコロ状に切り、シウマイ弁当に入っている筍を真似して、筍の甘辛煮。
それでも食べ切れない分は、お揚げと炊いて筍ご飯の素を作り、その状態で冷凍しておく。
筍と山菜で、カレーも作った。
これは、ご飯だけではなく、蕎麦やうどんにも合う。
こんなにも筍を満喫できたのは、数年ぶりだ。
掘り立てだから繊維が柔らかくて、アクもない。
これはもう、山に住んでいる者の特権だ。
山に住んでいる者の特権と言えば、タラの芽もそう。
先日、車で走っていたら、おじさんふたりが路肩に軽トラを止めて、何やら怪しげな行動をとっている。
ひとりのおじさんは細長い剪定鋏を持ち上げ、もうひとりのおじさんは下に布を広げている。
おじさんふたりの視線の先にあるのは、タラの芽だった。
そっか、あそこにタラの木があるのか!
そうやって見ると、あっちにもこっちにもタラの木がニョキニョキ生えている。
よし、場所を覚えておいて、帰りに私もいただいて帰ろうと実行した。
でも、取りやすい場所の芽は、もう全てが摘まれた後で、上の方の高い枝先にしか残っていない。
きっと近所に住むおばあちゃんたちが、今か今かと目を凝らし、一番いい場所のは最高のタイミングで採っているのだろう。
私も、来年はもう少し早く出向いて、タラの芽狩りに参戦しよう。
その日、ほんの少し、手が届く範囲で摘んだタラの芽は、すぐに天ぷらにしていただいた。
でも、ちょっと酸味が出ていた。
あの、ほろ苦い独特の味は、最初の頃のタラの芽にしかないのだと改めて勉強になる。
そのことがあって以来、自分の目が、タラの芽を探すモードになった。
まさに「タラの目」で、その目で見ると、あるわあるわ。
あっちにもこっちにも、タラの木がある。
なーんだ、ここに来ればわざわざお店で買わなくたっていっくらでもタラの芽が手に入るんじゃん! と少し拍子抜けした。
それくらい、道路沿いはタラの芽の宝庫になっていた。
つい数日前は、女性が軽自動車を路肩に停めて、何かを摘み取っている。
手にしているのは、おそらくワラビ。
そっか、そういう季節になったか、と教えてもらった。
私も早々に摘みに行かなくちゃだ。
山菜は、あっという間に成人になってしまうので、タイミングがとても大事。
昨日は、椎茸を発見した。
ちょうど去年の今頃、ご近所さんの手ほどきを受けながら仕込んだホダ木に、ひょっこり、椎茸が顔を出していた。
かわいい。
かわいすぎて、摘むのがもったいない。
でも、シーに見つかったら一発で食べられてしまう。
だから、私が摘まねば。
あと一晩だけ待って、明日収穫しよう。
そんなことを思いながら一日を終えたのだが、なんとなんと、朝起きて窓の外を見てびっくりした。
昨夜からの雨が雪になり、森一面が雪景色になっている。
新緑の鮮やかな緑と、白い雪の組み合わせが美しい。
地元の人の話では、5月の雪はまぁまぁあるらしいのだが、私にとっては初めて目にする景色で、なんだか朝から浮かれている。
今も、結構本格的に降っていて、カエデの木の下に新設したみつばちハウスにも、ようやく咲いた遅咲きスイセンにも、もちろん私の原木椎茸にも、雪が降り積もっている。
雪のため、本日予定されていた木こりさんの作業は、お休みになった。
まだこの森に来たばかりの新顔の植物さんたちは、大丈夫だろうか?
まさか、連休を過ぎてからもう一度雪景色に立ち会えるとは思っていなかったので、私としては心躍る一日になったけど。
春たけなわの雪景色で、今日という日が特別なものになった。