冬支度
束の間、里暮らしをする。
急に、都市生活者になった気分だ。
初雪の積もった富士山を眺めながら、ノラコヤで数日過ごした。
里とは言え、もうだいぶ寒い。
霜が降りる前に、収穫すべきものを無駄なく摘んでおきたい。
去年は、霜のことをあまり意識していなかったので、せっかく大きく育ったヴァナ・トゥルシーを一晩でダメにしてしまった。
自分で植物を育て始めると、霜に敏感になる。
春に摘んでお茶にしたスギナ茶がさすがに底を尽きたので、また春一番のスギナが出るまで、お茶は乾燥させたヴァナ・トゥルシーで凌ぐしかない。
小さな苗木を植えただけなのに、ヴァナ・トゥルシーは半年でぐんぐん大きくなり、もう私の背丈を超えた。
半耐寒性なので、寒さに弱く、冬を越せないかもしれないけど、これだけ丈夫な木に成長したら、もしかすると来年も生きて復活してくれないかな? と密かに期待している。
本当は満月のときに葉っぱを摘みたいのだが、そうも言っていられず、ノラコヤに滞在中、せっせと収穫した。
でも、海と空のいないノラコヤはなんだか物足りない。
早く冬になって、彼女たちを迎えに行きたい。
数日ぶりに山小屋に戻ると、カラマツ並木が見事なまでの黄金色になっていた。
裸木になるのも、時間の問題だ。
昨夜激しく雨が降らしく、今日も風が強いので、風が吹くたびにサーっと葉っぱが落ちてくる。
まるで、金色の雨が降っているようで、思わず見惚れてしまう。
木々たちは、またね! と主張するように、美しく色を変えている。
山小屋に戻ると、もう秋とも呼べないほど、葉っぱが落ちていた。
窓の向こうのコブシもすっかり落葉し、すでに花芽をつけている。
昨シーズンは、あまりコブシの花を見てあげることができなかった。
だから来春は、たっぷりと花の一部始終を味わいたい。
冬支度に勤しんでいたら、なんだか今日は温泉に行かなくてもいいかな、という気分になり、夕方、お顔サウナをする。
森からマツとモミの葉っぱをいただき、大きめの洗面器に入れ、そこに柑橘を切って、熱湯を注ぐ。
蒸気を逃がさないよう頭からすっぽりとタオルをかぶって、しばしサウナタイム。

これが、ものすっごく気持ちいいのだ。
肩まで蒸気に当てれば、コリもほぐれる。
途中、お湯を足して、更にレモンの精油をポタポタ。
香りの変化を楽しみ、更にシダーの精油も追加する。
なんという幸せ。
お湯の温度が下がってきたら、手のひらをお湯につけて、ハンドバス。
その後、今度はお湯を足して足湯をすれば、お風呂に入れなくてもスッキリする。
洗面器がなければお鍋で代用できるし、病気などでお風呂に入れない人も、お顔サウナならできるかもしれない。
ぜひ、やってみてください。
今日は、畑で採れたパプリカをピクルスにする。
苗を一本植えただけなのに、パプリカはたくさんの実りをもたらした。
しかも、おいしい。
こうやってピクルスにしておけば、冬場の野菜不足を補ってくれる。
ノラコヤにはちゃんとした冷蔵庫がないから、こういう保存食は本当に貴重なのだ。

数日ぶりに、薪ストーブのムッティに火を入れた。
ムッティとの呼吸もだいぶ合うようになり、もう、マッチは一本だけで火を起こせるようになった。
冬用の帽子やマフラー、手袋を出し、冬に備える。
この冬は、どんな景色に出会えるかな。
冬の到来が待ち遠しい。
