春待ち
冬の朝の森は賑やかだ。
夜明けと同時に、鳥たちがヒマワリの種を食べに集まってくる。
冬は、食べ物が少ないから、みんな、お腹を空かせているのだろう。
ちょうど2階の窓から見える枝が待合所になっていて、そこに止まって順番待ちをし、玄関先に置いてあるヒマワリの種をついばみに行く。
鳥だけではない。
リスもまた、毎朝必ずやって来るようになった。
去年までは1匹だったのが、今年に入ってから、2匹に増えた。
カップルさんかな?
森の木々を、2匹は飽きることなく縦横無尽に追いかけっこして遊んでいる。
冬場は樹木の葉っぱが落ちるので、シースルー状態となり、機敏なリスの動きが丸見えだ。
もう、本当にすばしっこい。
木から木へ、ムササビみたいに身軽に飛んで、瞬間移動する。
運動神経抜群だ。
よくもあんなに体力があるものだと感心する。
鳥が来て、リスが来て、もちろんシーも来て。
寒いのに、みんな頑張って春を待っているのだ。
でも春になると、鳥たちは動物性の餌を探すようになるので、ヒマワリの種を置いても見向きもしなくなる。
だから、今だけのお楽しみだ。
そうそう、魔法は消えた。
あんなに美しかった氷の世界。
このままずっと続くのかと思っていたのに、数日前、跡形もなくとけてしまった。
私は、あれが樹氷なのだと勘違いしていた。
でも、やっぱり真っ白いモンスターみたいなのが樹氷で、今回森に出現したのは、雨氷というらしい。
またひとつ賢くなった。
雨氷を思い出すだけで、うっとりしてしまう。
特に青空の下で輝く雨氷の森は、幻想的で、この世のものとは思えなかった。
森中がキラキラとクリスタルのように輝き、特にダケカンバの枝先は、まるでゴージャスなシャンデリアみたいで、いくらでも見ていられた。
もちろん、それによって折れてしまった枝はたくさんあるけれど、自然の神秘をのぞかせてもらったようで、もう本当に感謝の気持ちしかない。
雨氷は、次いつ見られるのだろう。
でも、儚いからこそ、またいいのかもしれない。
今はもう、普通の雪景色に戻っている。
この冬は、一年前に比べると、春が遅い。
先月は、ほぼ雪の印象だ。
雪は雪で楽しいし美しいのだけど、そろそろ冬も飽きてきた。
今朝の気温も、まだマイナス12度。
早く、春が来てほしい。
今日は日曜日なので、朝から台所に立つ。
まずは、昨日友人にもらった金柑を蜂蜜漬けにし、その後、チョコレートケーキを焼いた。
それから、豆ご飯も炊いたので、小さめのおにぎりにして冷凍した。
この先もまだまだ雪の予報が出ている。
外に出られなくのを想定して、せっせと保存食作りに励んだ。
ふと思いついて、金柑の種も、ヒマワリの種の横に置いてみたら、完食とはいかないものの、半分くらいはなくなった。
鳥たちによって、金柑の種がどこか見知らぬ土地の上に落ちるのを想像すると楽しくなる。
3シーズン目となる山小屋暮らしは、まずまず順調だ。
午後、カンジキ(スノーシュー)が届いたので、試しに森に道を作った。
これはいい!
スコップで雪かきをしなくても、カンジキを履いて歩くだけで簡単に道ができる。
しかも、いい運動にもなる。
次にまた雪が降ったら、その時はもっと遠くまでカンジキで歩いてみよう。
冬は、お楽しみがたくさんある。
夜、久しぶりにムッティに火を入れたら、やっぱりあったかい。
炎は、物理的に部屋の温度を上げる以上に、心を温めてくれる。
今夜は、風が強い。
ちょっと心細くなりそうな時は、火を見てリラックスするのが一番だ。