夏の始まり
朝の光が夏になった。
ついこの間までハルゼミが賑やかだったけど、今日鳴いているのは、もしかするとナツゼミかもしれない。
ちょっと、声が違うのだ。
ハルゼミの声は透き通って聴こえるのに対して、ナツゼミは地声。
男の子が中学生になって声変わりをしたみたいな感じなのだ。
さすがに今日は、気温が上がった。
里に下りるともっと暑いので、動きたくない。
それで夕方、珍しく山小屋のお風呂に入った。
大きくなった庭のミントとヨモギを切って、それをヤカンで煮出してお湯に入れる。
窓を開け放って、森を見ながら入浴した。
ただ、どんなに暑くても、夕方になると涼しい風が吹いてくれるのがありがたい。
髪の毛を乾かしがてら、ゆりねと散歩。
気温は下がっているのだが、それでもゆりねはあんまり歩きたくないらしく、途中で引き返した。
ゆりねも、私と一緒で蒸し暑いのがすごく苦手だ。
いやいやながら歩く必要は全くない。
時計を見ると、まだ夕方の5時半。
お風呂に行かなかった分、時間に余裕がある。
冷蔵庫から冷たいビールを出して、森へ。
ビールを飲みながら、しばし読書を楽しんだ。
この本、夏になると読みたくなる。
最高だ。
缶ビール一杯でほろ酔いになり、そのまま椅子に身を預けて寝そうになった。
それにしても、この言葉、とてもよくわかる。
私も、あえて自分の山小屋にはゲストルームは作らなかった。
年に何回かしか来ないお客さんのために、わざわざゲストルームを作るなんて無駄だもの。
ゲストが来た時だけ、臨機応変に、あるもので対応すればいい。
それが不服なら、近所の宿泊施設をお勧めする。
それで、全く問題ない。
ビールの後は、赤ワインを飲みつつ、お庭の植物たちに水を撒いた。
苔さんたちには、特に念入りに水をあげる。
おつまみは、おかき。
大好きなおかきをつまみながら、ホースが届かない場所にいる植物にはじょうろで水をあげる。
植物たちも、さすがに暑さでぐったりしている。
山小屋に戻ってから、ささっと素麺でお腹を満たした。
一把では足りず、二把では多かったので、お昼に思い切って二把まとめて茹でておいたのだ。
多い分は、水に浸けたまま冷蔵庫に入れておいた。
確か、素麺はそれでも大丈夫だったはず。
水を切った素麺に、あらかじめ用意しておいた、胡瓜の千切りと、お揚げの煮たのと、鶏のささみをさいたのをのせ、お出汁で伸ばした麺つゆとネギとオリーブオイルをかけて、豪快に食べる。
明かりは、蝋燭一本だけ。
夏になったとは言え、夏至を過ぎて、陽は確実に短くなっている。
暑い日は、こういう食事が一番だなぁ。
夏は、里より二ヶ月ほど遅く来て、そして二ヶ月ほど早く去っていく。
だから、本当に本当にあっという間なのだ。
短い夏を、今年は思いっきり味わいたい。
あぁ、やっと夏が来た。
本日は、一日ずっと森で過ごしたので、めでたくノーガソリンデー。