ボロボロジューシー
辺銀一家と「はてるま」へ行ってきた。
この場合のはてるまは、島の名前ではなく、西表島にあるごはん屋さん。
もう12、3年前になるのかなぁ。
「ソトコト」という雑誌で、取材させていただいた。
当時は、ナナ子さんという波照間島出身の女性が、1人で店を切り盛りしていた。
自ら漁に出て魚をとり、土を耕して野菜を育て、それを料理して出す、本当に素晴らしい店だった。
今は、ナナ子さんの息子さんが店を継ぎ、料理を出してくれる。
夕方の最終の便で西表へ行き、近くの民宿に泊まって、みんなでご飯を食べに行く。
西表でとれたモズクの酢の物、地魚のお刺身、長命草のサラダ、クーブーイリチー(細い昆布の炒め物)、どれもお見事。
懐かしい、ナナ子さんの味がする。
とりわけ、猪の焼肉は絶品だった。
皮の方からじっくりと焼いて、身の方はさっと火を通すだけにして、わさびと塩でいただく。
途中、ご飯をもらって、お寿司にして食べてみたり。
緑の野菜は、沖縄でよく食される、オオタニワタリという山菜だ。
これも、ほんのり粘り気があって、大好きなもの。
こういう、ちょこっとだけお肉を食べる食事が、一番嬉しい。
締めのご飯は、ボロボロジューシー。
これは、混ぜご飯をお粥にしたもので、昨夜はイカ墨味のボロボロジューシーだった。
デザートまで完食し、大満足で店を出る。
その後、散歩がてら夜道を歩いた。
本当に本当に、真っ暗。
一寸先は闇って、このことだと思った。
歩いていると、ちらほら、蛍の明かりが見える。
小一時間闇夜を散歩した。
朝は、小鳥の声で目を覚ます。
西表は、緑が濃厚だ。
石垣島から比べると、圧倒的に静か。
そこここに、生き物の気配を感じる島だ。
朝一番の船で石垣に戻って、オイルマッサージの施術を受ける。
ねーさんと、南インドに行ったことを思い出した。
まるで、ここはインドだ。
最高に気持ちよかった。
そして、お昼はベジタリアンインド料理の店へ。
ミールスのセットを、もりもりいただいた。
店の雰囲気といい、味といい、やっぱりここもインドだった。
石垣島にいると、まるで外国を旅しているような気分になる。
今日は、石垣ステイ最終日だ。
最後の一日として、これ以上ふさわしい過ごし方はないというくらい、完璧だった。
仕事の方は、ちょうど端境期だ。
端境期というのは、古米と新米が入れ替わる時期のことをいう言葉だけど、私の場合は、ひとつの物語がなんとなく自分の手を離れ、また新たな物語を迎えようとしている、そんな時期のことをいう。
そういう時は、思いっきりリラックスして、気分転換して、前の物語のことを、いったん全部忘れてしまう。
更地に戻すような感じなのだが、それには旅がうってつけなのだ。
今回の端境期は、それがとてもうまくいった気がする。
それも全て、ねーさんをはじめとする辺銀一家と、石垣島のおかげ。
東京に戻ったら、また新しい物語を迎え入れよう。
昨日のはてるまでの夕食のとき、もうすぐ19歳になる息子のタオが、
「パパ、僕のことインスタに書く時、『タオくん』って呼ぶの、やめてくれる? 同級生に見られて、恥ずかしいんだけど」
といって、お父さんが、ごめんなさい、と謝る会話とか、なかなか普段は味わえない家族の時間を垣間見ることができて幸せだった。
「ちゃん」づけで呼ばれるよりはいいんじゃないの? とフォローしておいたけど。
清らかなエネルギーをたっくさんもらった4日間だった。