冬支度

朝の気温は、5度。
日中も、10度ちょっとで、刻々と冬の足音が近づいている。

今日は、終日青空で気持ちよかった。
ずっとほったらかしになっていたお庭の手入れに精を出す。
冬越しのため、薬草たちは切り戻しを。
いない間シーにほじくり返された苗は、別の場所に植え直した。

数日前の強風で、だいぶ枝が落ちている。
ビュンビュンと、まるで鞭のように木の枝がしなっていた。
枝を拾い集め、短く折って、薪ストーブの焚き付け用に準備する。
もう、夜だけは薪ストーブを焚いている。
いよいよ、ムッティの出番だ。

乾燥しているから折れてしまうので、落ちた枝は、焚き付けにはもってこいだ。
去年よりもずっとスムーズに火がつくのは、しっかりと薪が乾燥しているから。
これから、せっせと火種となる松ぼっくり拾いをしないといけない。

今日は、山小屋から離れがたくて、温泉にも行かず、家のお風呂に入った。
離れていた分、たっぷりと蜜月の時間を過ごす。

晩ご飯に何を食べようかな、と思って冷蔵庫を開けたら、アケビと目が合ってしまう。
一週間ほど前にいただいたアケビ。
見た目は紫色でとてもとても美しいのだけど、私はどうも味が苦手なのだ。
山形の人は、秋になるとアケビを良く食べる。
大抵は、中の種を取り除いて、そこに味噌で味をつけた豚肉なんかを詰めて焼くのだ。
でも、アケビは苦くて、どうもおいしいと思えなかった。

母は、アケビの種の部分が大好きだった。
ただ、アケビの種は白いゼリーみたいなのに包まれていて、見た目がカエルの卵っぽい。
それもあって、私はアケビの種を食べようと思ったことは一度もない。

でも、目が合ってしまった。
最近、以前にも増して食べ物を粗末にすることに罪悪感を覚える。
もう、冷蔵庫に一週間も置かれていたアケビは、限界だ。
そろそろ食べないと、ダメになってしまう。

ということで、頑張って調理してみることにした。
肉詰めはハードルが高いので、昨日買ってきたベーコンと炒めてみる。
その過程で、種も口に入れてみた。
確かに、甘い。
でも、ほとんどが種なので、なかなか思うようには味わえない。
大量に出た種は、庭にまいた。
あれだけたくさんあれば、ひとつくらい、芽を出すかもしれない。
アケビは、ゴーヤだと思って、ゴーヤチャンプルーを作る時みたいにスライスしてベーコンと炒め、最後、甘めの玉味噌で味をつけた。

さて、冬に向けてやることが目白押しの今日この頃。
晩ご飯を食べる前に、松ぼっくりで天然の着火剤を作ってみようとひらめき、実行する。
松ぼっくりだけでもかなり火種にはなるのだが、周りを溶かした蜜蝋でコーティングしたら、もっと優秀な着火剤になるのではないか。
蜜蝋は、蜜蝋キャンドルで溶け残ったのが瓶いっぱいに溜まっている。
思いつくと、やらずにはいられない。
早速準備し、なんだか料理をしているような気分になりながら、去年拾った松ぼっくりを、溶かした蜜蝋の中へ落としていく。
いつの間にか、夕暮れが早くなった。

そして、晩ご飯。
恐る恐る、アケビのベーコン炒めを口にする。
と、おや?
おいしいではないか。
ほろ苦さが癖になる。
すごい、味覚って変わるのだ。
お腹が空いていたこともあり、二個のアケビを完食した。

2023年10月7日は、アケビをおいしいと感じた記念すべき日になった。