森のサウナへ

ベルリン在住のなっちゃんが遊びに来た。
6月の半ばから東京にいて、暑さですっかり疲れ切っている。
まずは気持ちいい汗をかいてもらうのがいいかな、と、迎えに行った駅から森のサウナへと直行した。

ここは、先日たまたま通りかかって見つけたキャンプ場だ。
最近、おしゃれなキャンプ場が増えている。
その、おしゃれなキャンプ場の森の中にサウナがあるのだ。
ベルリンに住んで、私はすっかりサウナ好きになった。
その頃は、温泉がわりの、サウナだった。

私にとって、暑い日こそ、サウナだ。
サウナでいっぱい汗を流せば、どんなに外気温が高くても、涼しく感じる。
水風呂だって気持ちいい。

さて、初めて入った森のサウナ。
最高だった。
日本なので水着着用は仕方がないけど。
自分でローリュウもできて、熱々にできる。
外に出れば、シャワーと水風呂。
ハンモックに寝そべれば、森が見える。
こういうサウナを、待っていた。

なっちゃんは、山小屋がある森の環境をとても気に入ってくれた。
一日目の夜は、少し遠くまで散歩に出て、道路に寝っ転がって星を見た。
冬の夜空ほどすごくはないけれど、それでも、都会の空から比べたら十分すぎるほどの星が見える。

私も、さすがにひとりではこういうことはできないので、ゲストが来てくれるとありがたい。
二日目の夜は、夕暮れから森でワインを飲んで、辺りが真っ暗になるまでおしゃべり。
ちょっと蚊に刺されたけど、手作りの虫刺されオイルですぐにかゆみは引いた。

それにしても、信州には素敵な場所がたくさんある。
特に夏は、川や湖、滝など、水辺がすぐ近くにあるから、暑いとサクッとそういう場所に行って涼しさを感じることができる。
私の最近のお気に入りはとある滝壺で、もう、本当に本当に美しく、神秘的なのだ。
誰にも教えたくないけど、心を許した人たちにだけは、こっそり案内するようにしている。

春は、雪解け水が、それこそドードーと勢いよく流れ落ちていた。
でも今は、滝はなく、ただ滝壺だけがある。
その滝壺の水がものすごく綺麗で、こんな美しい場所を自然の働きだけで作れることに感動する。
「ここって、地面の内側にいるってこと?」
なっちゃんが、周囲を取り囲む石の層を見上げながらつぶやいていた。

暑い日は、ここの小さな水たまりで桃を冷やしておやつにする。
今、私がメロメロになっているとっておきの聖地だ。

私の運転で朝ごはんを食べにカフェに向かっている時、先日亡くなったryuchellさんに話が及んだ。
私もなっちゃんも、ryuchellさんが大好きだった。
あんなに美しい心をした子が自ら死を選ばなければいけない世の中は、本当におかしいと思う。
もしもryucellさんが、日本だけでなく、もっと違う国に身をおいて、それこそベルリンに行って違う景色を見ていたら、そこに居場所を見つけられたんじゃないかと思うと、悔しくて悔しくて仕方がない。

当事者でなければ原因はわからないけれど、ネットでの誹謗中傷とか、本当に余計なお世話だ。
日本には、余計なお世話的な迷惑行為が多すぎる気がする。
余計なお世話とおせっかいは、似ているようで根本が違うと思う。
もう、こんな世の中は、変えていかないとダメだ。
もし、今ある環境に息苦しさを感じるのであれば、どんどん外に出て、自分が深く呼吸できる場所を見つけてほしい。
きっとあるはずだと思うから。

なっちゃんも、自分の意思で18歳で日本を飛び出し、海外へ行った。
もう子どもの頃から、自分は外国に行くと決めていたそうだ。
ベルリンには、20年以上暮らしている。
ドイツ語を身につけ、きちんとドイツの会社でも働いて、偉いなぁ。
今はフリーでデザインの仕事をしたり、自然の素材を用いてアクセサリーを作ったりしている。
この「糸通信」のデザインをしてくれたのも、なっちゃんだ。

そうそう、八ヶ岳界隈には、結構外国から来た人が住んでいる。
この森の環境が、なんかベルリンぽく感じてこの場所を選んだという話をしたら、なっちゃんはすぐに理解してくれた。
そして日本には、まだまだ自分たちが気づいていない魅力的な場所が、たーくさんある。
そういう場所を、外から来た人たちが見つけてくれているのだろう。

なんだか久しぶりにベルリンにいるみたいな気持ちになる3日間を過ごした。