動物病院へ
全然、無事に終わらなかったのだ。
オハナの避妊手術。
夕方、迎えに行ったオハナは、まだ麻酔から覚めきらず、ちょっと朦朧としていた。
でも、それはどの犬もそうで、想定の範囲内。
帰りの車の中で、オハナは珍しく、ぺったんこになって下に寝そべっていた。
普段は、後ろ向きにお座りの姿勢で固まっているのだが。
帰宅して、ササミをあげても、口をつけず。
これも、まぁ想定内。
食べず、水も飲まず、ぐったりした様子で、ずっと横になっていた。
私もちょっと疲れていたので、早めに就寝した。
夜中、かすかな物音がしたので様子を見に行く。
すると、術後着が濡れている。
ゆりねの避妊手術のときは、頭にエリザベスカーラーをつけられていたけど、最近は傷口全体を覆うスクール水着みたいな術後着を着せるらしい。
おしっこでもしちゃったかな、と思って見たら、ピンクの術後着に赤いシミが広がっている。
出血しているのだ。
まずは血を止めなくちゃと思ってタオルを当てると、白いタオルがみるみる赤く染まる。
ちゃんと見ると、オハナが寝ていた敷物にも、血が広がっている。
夕方、お迎えに行ったとき、先生が、大抵の犬は手術中や手術後に血圧が低くなるのだけど、オハナはなぜか血圧が高くなった、と教えてくれた。
そのせいで、もしかしたら少し出血するかもしれない、とも言われていた。
でも、そんな「少し」とは全く言えない量の血が出ている。
時計を見ると、夜明け前の4時。
24時間受け入れてくれる救急の動物病院に行くべきか、それとも朝を待って手術を受けた病院に連絡すべきか。
ただ、救急の動物病院は車で1時間以上かかるし、オハナは車に乗るのが苦手ですぐに吐いてしまう。
この状態で果たして車に乗せて長時間移動するのが正しいのだろうか。
逡巡する間にも、オハナは血を流している。
結局、救急はやめて、手術を受けた動物病院に連絡することにした。
なんとかオハナの出血が止まることを祈りながら。
替えても替えても赤く染まるタオルを目にしながら、最悪のことが頭をよぎった。
ようやく動物病院に電話が繋がったのは、朝の8時半。
事情を説明すると、すぐに連れてきてください、とのこと。
オハナを車に乗せて、病院を目指す。
山小屋から病院までは、車で15分くらいだ。
すぐにエコーで検査し、他にも貧血の状態などを確認する。
こんなふうに避妊手術の後に出血した例は先生にも経験がないそうで、明らかに狼狽えていた。
緊急の処置が入ったので、午前中に診察の予約を入れていた方達には、予定を変更していただくこととなる。
検査の結果、内臓からの出血は見られなかった。
皮膚からの出血もない。
考えられるのは筋膜からの出血だが、こんなに血が出て、しかも止まらないのはおかしいという。
幸い、貧血状態にはなっていなかったし、当の本人もそれほど痛そうとか辛そうな様子も見られなかった。
どこから出血しているのか、その原因はなんなのかは不明のまま、とりあえず血を止めるため、止血帯をキツめに巻いて、様子を見ることになる。
本当は夕方までオハナを病院で預かってもらえたら安心なのだけど、オハナは慣れない場所にいると全く落ち着かず、ダメなのだ。
それで私と一緒に山小屋に戻り、様子を見て、夕方、出血の具合を電話で報告し、その後の対応を考えることになった。
もしもこのまま出血が続けば、再度全身麻酔をして、縫ったところをまた開いて、傷口を焼くのだという。
当然、そうなった場合は大きなリスクが伴うから、とにかく血が止まることを祈るしかない。
山小屋に戻ると、さすがにお腹が空いていたのか、ササミばかりを3本くらいペロリと平げ、夕飯もいつもの8割くらいは食べることができた。
白い包帯に血が滲むこともなく、どうやら出血はおさまった模様。
このまま一晩また様子を見て、翌日、動物病院へ連れて行くことになった。
本当にこの病院が近くにあって助かった。
犬や猫などの小動物を見てくれるのは頼り甲斐のある若い女の先生で、最近出産したばかり。
病院には、先生の飼っている犬と赤ちゃんも一緒に来ていて、先生が診察をしている間は、病院のスタッフさんが赤ちゃんの面倒を見ている。
病院では、おそらくお父さんと旦那さんも共に働いている。
犬の名前を言えばすぐにわかってくれるし、親身になって相談にも乗ってくれる。
この日も、臨時休診だったのに、対応してくださった。
ぐるぐる巻きにされていた止血帯を外して中を確認したところ、出血はほぼ見られなかった。
これで一安心。
ここからオハナはV字回復し、昨日はゴハンをもりもり食べ、お散歩もたくさんできた。
後に気づいたのだが、手術と満月のタイミングが重なっていた。
満月のときは血が止まりづらいと知っていたのに、うっかり、そのことを考慮するのを忘れ、自分の都合でオハナの手術日を決めてしまったことを後悔する。
オハナの出血はまさに満月の日で、その影響もあって血が止まりづらかったのかもしれない。
宇宙犬のオハナには、ありえるような気がする。
それにしても、止血帯を巻かれたオハナは、やっぱりまだまだガリガリだった。
腰回りは、もしかするとゆりねの方がしっかりしている。
手術前にお腹の毛もそられて、なんだかとっても痛々しいのだが、最悪の事態にならなかったことが、何よりも嬉しい。
あのままもっと大量の血が流れていたら、どうなっていたか。
元気でいてくれることが、最大のギフトだ。

今日もこれから、動物病院へ。