長野と山梨
山小屋の住所は長野県だけど、隣の町は山梨県で、日常的に、長野と山梨を行ったり来たりしている。
カーナビを使っていると、「長野県に入りました」とか、「山梨県に入りました」と毎回教えてくれるのだが、不思議と、「長野県に入りました」を聞くとホッとする。
ずっと、村人になりたいなぁ、と思っていたんだけど、今の住所は、まさに「村」なので、それが嬉しい。
ものすごく近いのだけど、長野と山梨では、違うのだ。
まず、農産物。
野菜が充実しているのは長野だし、山梨は果物王国という印象が強い。
長野から山梨に入った途端、桃とか葡萄とかののぼりが目立つようになる。
何となく洒落ているのは山梨で、ギャラリーやカフェなど、素敵なお店がたくさんある。
一方、長野は自然が本当に豊かだ。
私は、どっちも好きだなぁ。
それぞれに、良さがある。
そんなことを日々感じて暮らしていたら、昨日お世話になったマッサージ師さんが、興味深い話を教えてくれた。
雪道について尋ねたところ、「雪の日に山梨方面へ行く時は、注意してくださいね」とのこと。
どうやら、長野と山梨では、雪に対しての対処が異なるらしい。
長野の方が、迅速に、かつ丁寧に除雪してくれるという。
同じ国道を走っていて、山梨に入った途端、雪かきの初動が遅れるし、やり方も甘くなると。
そっか、県境を跨ぐというのは、そういうこともあるのだな、と深く納得した。
さすがに、真冬をここで過ごす覚悟はないけれど、でも聞いておいてよかった。
今夜は、中秋の名月だ。
ずっとずっと雨続きだったので、諦めていたのだけど、珍しく晴れてくれた。
部屋を暗くして、バッハの無伴奏チェロ組曲を聴きながら、お月見を楽しむ。
森の木々の葉が視界を遮るので、なかなか全貌を見ることは難しいのだが、たまに姿を現すと、本当に美しくて感動した。
青空もそうだけど、お月様も、いつも当たり前に見えるより、たまに見れる方が、ずっとずっと有り難みが増す気がする。
さっき、外に出て満月を見てきた。
ここは、街灯が全くないので、本当に、一寸先は闇の世界なのだけど、今夜は月明かりがすごく眩しい。
こんなに真っ暗な中で月を見るのは、人生で初めてかもしれない。
なんていう、神秘だろう。
一晩中、月を見ていたい。