3度目の黒島へ

朝、ホテルを7時半に出て、船に乗って黒島へ。
カゴには、朝ごはん用のフルーツやらおやつやら、タオルやらが色々入っている。
海に入る気満々で、中に水着を来て出かけたのだ。
黒島までは、船で30分くらい。
黒島に近づくと、急に海が青くなる。

黒島を訪ねるのはこれで3度目だ。
1度目は、NHKで放送されたドラマ『つるかめ助産院』のロケ現場を見に来た時。
ただ、この時のことはほとんど覚えていない。
そして2度目は、ちょうど一年前、友人とその娘ちゃんと。
その時、結婚して黒島に嫁いだマキちゃんと知り合ったのだった。

まずは、港のすぐ横にあるお気に入りのビーチへ直行する。
産道みたいな細い道を通って、岩と岩の間をやっとくぐり抜けると、海に出る。

私、この場所が、ものすごく好きだ。
今日は、ここでひとりピクニックを楽しむ。
案の定、朝の砂浜には誰もいなくて、私だけのプライベートビーチを満喫できた。

曇りだったので、水は結構冷たかった。
海に肩まで浸かるつもりで水着を着てきたけど、ちょっと寒そうなので、まずは砂の上にあぐらをかき、たっぷり瞑想する。
波の音を聞きながら、呼吸を意識して心を鎮める。
パッと目を開けた時の目の前の海の美しさに、毎回同じように感動した。
生きているって、なんて素敵なことなんだろう。

小腹が空いたので、途中、ミズレモンとグァバを食べる。

今、ものすごーく好きな果物がミズレモンだ。
去年の暮れに、石垣島からねーさんが送ってくれて、初めて食べた。
見た目はつるんとしたレモンなのだけど、手触りがふわふわしている。
触っているだけで、安心するような、そんな感じ。

一箇所、ちょっとだけ割れ目を入れ、そこに口を当てて、チューっと吸うと、中から甘酸っぱい種が出てくる。
これが、実においしい。
種は、ゼリー状の何かに包まれていて、とにかくなんとも言えず爽やかで、微笑ましい味なのだ。
食感としては、パッションフルーツに近い。

石垣でも、作っている人はまだ少なくて、なかなか手に入れることができない貴重なフルーツとのこと。
今朝いただいたのは、ねーさんがお庭のジャングルで手塩にかけて育てて、小さな小さなミズレモンだ。
海を見ながら、ミズレモンが食べられるなんて、最高に幸せだった。

本を読んでは海に足をつけ、寒くなったら上がって温かいお茶を飲み、そんなことを繰り返していたら、あっという間に3時間が過ぎていた。
海を離れるのはとてもとても名残惜しかったのだけど、マキちゃんにも会いに行きたいので、海に別れを告げた。
それから、レンタサイクル屋さんに行って、電動自転車を借りる。

マキちゃんとようやく連絡がついたのは、昨日の夜だった。
なんとなんと、マキちゃん、お母さんになっていた。
去年、私たちと会ってすぐに新しい命を授かり、里帰り出産をして、赤ちゃんと共に黒島に戻ったのが、つい一週間前だという。
この一年で、マキちゃんの人生に激動が訪れていた。

牛のいるのどかな風景を見ながら自転車をこいで、マキちゃんの家を目指す。
もし会えなかったら、もう家の前にお土産を置いて帰ろうと思っていたところだったので、本人に直接会えるのは、すごく嬉しい。
しかも、赤ちゃんにまで会えるなんて、二重の喜びだ。

マキちゃんとは、同じ東北出身で、しかもバルト三国つながりでもある。
去年初めて会った時は、お互い、リトアニアの同じブランドのワンピースを着ていてびっくり。
ものすごく小さなブランドなのに。
マキちゃんは、ラトビアをはじめとするバルト三国の手仕事を紹介する仕事をしていたり、自分でも布を織ったり、とても魅力的な女性だ。
不思議なご縁を感じずにはいられない。

マキちゃんの家は、すぐにわかった。
一年ぶりに、再会する。
そして、マキちゃんから、大きなサプライズが待っていた。
なんとなんと、赤ちゃんの名前が、糸ちゃんだったのだ。
これには、本当に本当にびっくり〜!!!!

この世界に出てきてまだ一月半の糸ちゃんを、抱っこさせてもらった。
なんという可愛らしさだろう。
体はまだふにゃふにゃなのに、でもしっかりと力強く生きている。
生命の、ものすごい神秘を感じた。
だって、一年前は、まだどこにも存在していなかったのだ。
それが、マキちゃんの胎内で育まれ、今、こうしてたくましくミルクを飲んでいる。
糸ちゃん、めちゃくちゃかわいくて、ずっといつまでも抱っこしていたくなった。

それでも、私は午後の早い便で石垣に戻らなくてはいけない。
マキちゃんと糸ちゃんにバイバイし、自転車を飛ばして港を目指した。
幸せで、幸せすぎて、この感動をどう表していいかさっぱりわからないのだけど、とにかく、全てが神様からのギフトなんだなぁ、としみじみ感じた。
黒島に糸ちゃんがいると思うだけで、私はとてもハッピーな気持ちになれる。

糸ちゃん、生まれてきてくれて、ありがとう。
今度は、ジャングで遊ぼうね!
柳で編んだラトビアのカゴで眠る糸ちゃんを思い出すだけで、キュンとしてしまう。
めんこいめんこい(かわいいかわいい)糸ちゃんだった。