森へ
昨日は、朝起きたら一面雪景色だった。
この冬一番の積雪で、何もかもがすっぽりと雪に覆われている。
雪が降ると、突如として時間の流れが非日常になる。
なんだかちょっと浮かれてしまう。
しなくちゃいけないことがあっても、雪のせいにして、しなくても許されるような気持ちになるというか。
雪の魔法で、ふわりと、日常の束縛から解放される。
そんなわけで、なかなか森に戻れないでいた。
でも、天気予報を見ると、もう大丈夫そう。
しかも今日は、春分の日だ。
山小屋に戻るのには、最高の日和である。
つい今しがた、食べかけの食料品などをカゴに詰め、ゆりねと共に戻ってきた。
私はちょこちょこ山小屋に顔を出していたけれど、ゆりねは久しぶりの森である。
一昨日から昨日にかけて、お山の方もだいぶ雪が降ったらしい。
この冬初めての雪かきをしながら、山小屋まで進む。
ただいま〜、と大きな声で挨拶した。
空気は冷たいけど、青空なので気持ちいい。
山小屋と、ノラコヤ。
感覚としては、山小屋の離れが、ノラコヤだ。
私にとっては、どっちも本当に大切な場所。
ノラコヤも、完成早々これだけ私とべったりいれば、私を主人だと認めてくれるだろう。
彼の癖もだいぶわかったし。
山小屋の方は、とても寛大な性格だけど、やっぱり急に私とゆりねがいなくなって、拗ねている。
特にムッティは、おそらく相当機嫌が悪い。
完全に冷え切ってしまっているので、間が空くとまた関係性を構築するのに時間がかかるのだ。
だから今日は、いつもより少し早めに火を入れよう。
おそらくマッチも何本か無駄にしてしまうに違いない。
あぁ、でも本当にきれい。
この森に出会えて、本当に本当に良かった。
来シーズンは、大体冬至から春分までをノラコヤで過ごすのがいいかもしれない。
それが、私にとっての冬になる。
それでも、冬の始まりと終わりは山小屋で十分冬の醍醐味を味わえる。
なんたって、ここでは冬の時間が長いのだ。
久しぶりに山小屋に戻ったら、人知れず、ヒヤシンスが咲いていた。
ここで留守番をしながら、日々変化し、静かに成長を続けていたのだ。
ほんのりと、甘い香りを放っている。