庭仕事
蕎麦の芽が、すくすくと大きくなっている。
鹿さん、気づいていないのか、それとも興味がないのか。
葉っぱのひとつも食べられることなく、順調だ。
この調子で大きくなってね、と毎日、こっそり話かけている。
裸足で歩ける小径は、まぁまぁできた。
まぁまぁ、というのは、やってもやってもキリがないから。
とりあえず、足の裏に当たると痛そうな小枝などを取り除き、小さな通路を作った。
何度も何度も繰り返し同じところを歩いていれば、きっといつか、誰もが道と思えるような立派な小径ができるんじゃないかな?
裸足で地面を歩くのは、とにかく気持ちがいい。
今日も、お日様バンザイデーだ。
急きょ、洗濯をし、外に干す。
外に干すのは、初めてのこと。
外壁にフックをつけていてもらって、大正解だった。
毎日着ている山Tシャツが、嬉しいほどにカラッと乾く。
洗濯物が気持ち良く乾く感覚を久しぶりに味わって、嬉しくなった。
想定外のひとつは、洗濯物がなかなか乾かないこと。
設計をしてくださった丸山さんに、浴室乾燥機とか必要ないですか? と聞かれ、速攻で要りません、と答えた過去の自分を憎んだほど。
森暮らしの実態に、想像力が及んでいなかった。
雨が続くと、洗濯物はなかなか乾かないし、乾いても生乾きで、決して気持ちがいいものではない。
お日様の恩恵を無駄にしないよう、先日漬けた梅干しも干した。
太陽光で発電する、愛用のソネングラスも日光浴。
山小屋の外壁に使ったのは、地元産のカラマツだ。
なるべく地産地消で建てたかったので。
上から、なんの塗装もしていないのに、艶がある。
カラマツは、ふんわり、洋菓子みたいな甘い香りがする。
だから、山小屋に帰って玄関を開ける時、いっつもいい香りに包まれる。
ちなみに、中の床に使ったのは、ロシア産のカラマツ。
今となっては、とても貴重な床材だけど。
これから、少しずつ、色の変化を楽しみたい。
裸足で歩ける小径ができたので、ちょこちょこと庭仕事に精を出す。
先日、道の駅で、植物の苗を見つけた。
藍、リーフセロリ、バジリコナーノ(小さいバジル)、チャイブ、ワイルドストロベリーはなんとなく知っている植物だけど、ベトニーとセントジョーンズワートは初耳のハーブ。
説明書きを読んだら、ついつられて買ってしまったのだ。
だって、セントジョーンズワートには、「誰でも『心が風邪をひく』ってことありますよネ。そんな時のハーブです。」とあるし、ベトニーには、「傷のちりょう薬として古くから使われています。」なんて書いてあるのだ。
まるで、本屋さんに置いてある書店員さん手書きのポップみたい。
生産者の方が書かれたのか、それともお店の方が書かれたのかはわからないけれど、なんだかその苗木に愛を感じて、つい、育ててみたくなったのだ。
調べてみると、セントジョーンズワートは、別名、セイヨウオトギリソウで、いろんなサプリになって販売もされている。
神経伝達物質のバランスを整え、不安や緊張、気持ちの落ち込みを緩和し、精神をリラックスさせる方向に導いてくれるらしい。
セントジョーンズワートと聞くと目新しい響きになるけど、オトギリソウは馴染みのある植物だ。
先日、出羽屋さんへ取材に行って、虫刺されに効くとお土産に頂いたのも、オトギリソウを焼酎に漬けたものだった。
きっと、日本人も昔からオトギリソウを民間療法に使っていたのだろう。
鹿に食べられないことを祈りながら、人目につきやすいシンボルツリーの根元に植えた。
雨続きで気持ちが塞ぎそうになったら、お茶にして飲んでみよう。
黄色い花が咲くというのも、楽しみだ。
庭仕事の合間に、読書。
読んだのは、ヘンリー・ディヴィッド・ソローによる、『孤独の愉しみ方 森の生活者ソローの叡智』。
森の中で読むと、これまでジャリジャリと砂にまみれていた言葉たちも、スーッと水を飲むように体に馴染むから不思議だった。
ソローの言葉に、いちいち云々と頷きながら、ページを捲る。
本当に、森での暮らしは、決して孤独ではない。
むしろ、どんどん仲間が増えていく実感がある。
まぁ、欲を言うなら、近所に、お菓子ができたらふらりと持って会いに行けるような、気の合う人間の茶飲み友達でもできれば最高なんだけど。
それはまた、おいおいということで。
今は、孤独を大いに楽しんでいる。
写真の右下に、小さく写っているキノコ、わかりますか?
傘が、メタリックなすごい色をしている!