ヒマラヤ合宿③

(9月19日)

パンゴン・ツォへ。
今回、どうしてもこの湖に行きたかった。
一度、その絶景をこの目で見てみたい。

空路はなく、ラダックから車で、5、6時間もかかる。
しかも途中、5300メートルのチャンラ峠を越えていかなければならない。
なんとなんと、まさかの雪景色だった。
山肌を削るように作られた冗談かと思うほどの細い道路を通って行く。
ちょっとでも道を外れたら、真っ逆さまに転落しそうでハラハラした。
あまりの寒さに、持っていた防寒着を全部着込む。
いらないと思って、ムンバイのホテルにセーターとかを置いてきてしまったことが悔やまれた。

でも、パンゴン・ツォは想像以上に素晴らしかった。
これほどまでに美しく清らかな世界があったとは!
あまりに感動して、ぴーちゃんとふたり、ため息しかこぼれない。
湖の水はものすごく透き通っていて、太陽の光を受けると、鮮やかなトルコブルーに染まる。
向こうには、山、山、山、山。
幾重にも連なる屈強な山たちが、湖をしっかりと四方八方から守っている。
湖の向こう側は中国だ。

飛び込みで入った宿で、ベッドに入ってゴロゴロしながら、ひたすら湖を眺めた。
でも、全然見飽きない。
確かに片道5時間のドライブは体にこたえたけど、はるばる来て正解だった。
来ようと思って、簡単に来れる場所では決してない。
宿泊したメラック村は、つい最近まで外国人は入れず、秘境中の秘境だったという。
冬は、マイナス30度とか40度になるらしい。

ホテルの電気がつくのは、夜7時から。
夕飯を食べている時も、しょっちゅう停電して真っ暗になる。
この地で生活を営むのは、本当に過酷だ。
Wi-Fiもなく、電話も通じず、とにかく静か。
夕食後、宿のおじさんが特別に焚き火をしてくれた。
寒くて寒くて、フリースを着たまま布団に入った。

朝、村を散歩した。
人はほとんどいない。
太陽が昇るにつれて、湖の色が刻々と変化する。
それがまた美しい。

自分の人生が残りわずかとなった時、この湖をもう一度見たくなるような予感がする。
でも、その時はきっと、もうこの場所まで体を運ぶことはできない。
一回でいいから、パンゴン・ツォを鳥の目で上空から見てみたい。
きっと地球には、他にももっともっと、こういう宝石みたいに美しい場所があるのだろう。
残りの人生は、そういう美しい景色に会いに行く旅をもっとしたいと強く思った。