ジャムを煮る
雨が降って風が吹くと、落葉が一気に進む。
水は、ますます冷たくなっている。
糠床に入っている野菜は、胡瓜から蕪へ、バトンタッチした。
秋が深まると、森が、より一層香ばしい匂いを放つ。
いい季節になってきた。
ノラコヤで収穫した柿を渋抜きしていたら、熟し過ぎてグジュグジュになってしまう。
柿は、どちらかというと、熟す前のパリッとした食感の方が好きだ。
でも、グジュグジュになっても捨てるなんてことはしない。
今日は、完熟柿でジャムを煮る。
半分に切ってスプーンを入れるだけで、とろりと中身が落ちてくる。
ゼリーのような濃いオレンジ色で、美しい。
それらを全て鍋に入れて、火にかける。
もう十分甘いので、砂糖はほんの少し加える程度。
長期保存をするつもりもないから、火も、それほど入れない。
生の柿に、ちょっとだけ手を加えてジャムにする。
最後に、体を温めるシナモンと、香りづけのブランデーを。
あっという間に柿のジャムが完成した。
頭がジャムモードになったので、ノラコヤでとれたイチジクも、ジャムにした。
こちらも、軽く軽く火を通すだけ。
最後に、黒胡椒で味を調えた。
ジャムを煮ながら、みっちゃんのことを想う。
去年、数年ぶりにみっちゃんからメールが来て、近況を報告しあい、時間ができたらまた会おう、と言い合っていた。
長野と新潟、車で行ったらどのくらいかかるかな、なんて調べたりして。
みっちゃんは、ジャムを作る名人だった。
出会ったのは、私がプロとして物語を書くようになった頃で、同じ頃、みっちゃんも仕事としてジャムを作るようになった。
お互い励まし合い、時々会っては、悩みや愚痴を言い合った。
私は、逞しく生きるみっちゃんが、大好きだった。
今年になって、いきなり、みっちゃんからジャムが届いた。
いや、みっちゃんからじゃなくて、送り主は、みっちゃんのパートナーからだった。
ん? と思いながら箱を開けたら、いつものみっちゃんのジャムが入っていて、でも、それはみっちゃんが、生前、最後に作ったジャムだという。
貴重なジャムを、彼が送ってくれたのだ。
そのジャムは、まだ食べられなくて、きれいに包み紙に包まれたまま、私のそばにいる。
最後に会ったのは、5年前くらいだろうか。
確か、コロナの頃。
吉祥寺の古いデパートの、ゲームがいっぱい置いてある渡り廊下のようなところで。
みっちゃんは、まだ幼い娘を連れていた。
そこで、本当にちょこっと、立ち話をして別れた。
まさか、あれが最後になっちゃうなんてなぁ。
みっちゃんの作るジャム、おいしかったよぉ、と思いながら、ジャムを煮た。
みっちゃんが作る魔法のジャムには、遠く及ばないけれど。
当たり前に、また会えると思っていたのに。
多分、これから先も、私はジャムを煮るたびに、みっちゃんのことを思うのだろう。
