お引っ越し
すごく強力な寒気団が来そうなので、ゆりねを連れて山を下りる。
たった車で30分離れた場所に移るとはいえ、野菜を無駄にしないよう料理したり、忘れ物がないかをチェックしたり、掃除をしたり、洗濯をしたり、何かとやることがある。
里の友人が畑で作った白菜は、夏に採れたトマトを加熱して冷凍しておいた自家製トマトソースと煮込んだ。
一緒に、ノラコヤ産ピーマンも入れる。
くたくたに煮たら、量も減って、持ち運びやすくなった。
去年から、山小屋の水抜きはしない。
その代わり、お風呂にお湯を溜めておく。
全ての荷物を花ちゃんに積んで、ゆりねも乗せて、ノラコヤへ。
いくらでもまた来れるのに、なんだか妙にセンチメンタルな気分になる。
山を下りながら、山小屋から離れるのが、ものすごく切なくなった。
遠い場所へ行くわけでもないのに、自分でも自分の感情の変化がおかしくなる。
ノラコヤへ着いてしまうと、そこには植物たちがいるし、ご近所さんもいるし、温泉も近くて、里は里でやっぱりいいものだと、るんるんした気持ちになる。
勝手なものだ。
夏の終わりに種を蒔いたラディッシュと小松菜は上機嫌で育っているし、試しに植えてみた野沢菜も、芽を出している。
これで海と空が合流すれば、完璧な里暮らしだ。
今回は、近くの図書館も利用してみようと思う。
里では、いろんな場所からでっかい富士山が見える。
今朝も、まだ薄暗いうちに起きたら、末広がりの富士山のシルエットが、バッチリと夜明け前の空に広がっていた。
夕方は、美しいお月様。
里には里の、美しさや喜びがあることを思い出す。
今日もまた、寒い寒いと言いながら、せっせと球根を植えた。
植えたそばから、どこに植えたかを忘れてしまう、しょうもない私。
でも、この球根たちが春になって再び地上に顔を出すのを想像するだけで、うっとりして寒さも吹き飛ぶ。
冬は、庭でやる仕事が少なくなるのが寂しい。
早く、ヤギたちを迎えに行って、里暮らしを本格始動させたい。
