立夏
田んぼに水が張られた。
いよいよ、田植えの季節。
夜、外に出るとカエルたちの合唱が聞こえてくる。
まさに、立夏だ。
新緑たちも、もう生まれたての赤ちゃんという風情ではなくなってきている。
花の季節が終わり、庭の果樹たちに、小さな実がつき始めた。
今朝は、かわいいイチゴを発見する。
あと少し様子を見て食べ頃を待ちたいけど、その前に、他の生き物に食べられてしまうかもしれない。
桑とブルーベリー、それにフサスグリにも、小さい緑色の果実ができている。
朝、山羊小屋を掃除して、ちりとりに集めた糞を果樹たちの根元へ撒いておく。
できた実は、私がいただく。
そんなふうに、緩やかに巡るのが心地よい。
そうそう、連休中、立派な筍をいただいたのだが、なんと海と空は、筍の皮も食べてくれた。
こんなに繊維の強いものをあげちゃってお腹を壊さないのだろうか、と最初は不安だったのだが、ちゃんと彼らの口に収まる大きさに割いてあげれば、むしゃむしゃ、むしゃむしゃ、おいしそうに食べてくれる。
バナナの皮とか、笹とか筍の皮とか、到底人が食べられないものを消化し、それを糞として出してくれて、それが畑の肥料になって作物が育つというのだから、なんと無駄のない営みだろう。
その点においては、人も食べられるトウモロコシ等を餌として食べる牛なんかとは、全然意味が違う。
山羊は、草刈機の役目も、ディスポーザーの役目も果たしてくれるのだ。
本当に本当にありがたい存在である。
マンション暮らしをしていた頃、私はこの時期、何回かディスポーザーに筍の皮を入れてしまい、ディスポーザーが動かなくなって、修理に来てもらったことがある。
そのたびに、泣く泣く、高い修理代を払っていた。
ディスポーザーはかなり硬いものでも粉砕してくれたけど、さすがに筍の皮は硬すぎたのだろう。
だから、そんな手強い筍の皮まで食べてくれるメェたちを、私は心から尊敬する。
もちろん、雑草を食べるのも、機械がやったように完璧ではないけれど、でも、私はほどほどで十分なんじゃないかと。
逆に、雑草一本生えていないピカピカの畑の方が、よっぽど怖い気がする。
家単位でヤギを飼育するのが難しいなら、地域ぐるみでヤギを飼って、生ゴミを減らす取り組みをしたり、各家を回って草刈りをしてもらったり、そんなふうに緩やかにヤギと人とのハッピーハッピーの関係が築けたらいいのに。
本当はこのまま海と空を引き取りたいのだが、懸念が解決されない以上は、時期尚早だと思っている。
懸案材料その1は、夏の暑さ。
ノラコヤでまだ夏を過ごしていないのだが、ここは標高が700メートルほどしかなく、夏はかなり暑くなるのだ。
山小屋のある森へ連れて行ければいいのだけど、向こうは逆に、メェたちにとっての毒草しか、残っていない。
他は、シーが食べ尽くしているので、森に残っているのは、シーにもメェにも毒になる植物ばかりなのだ。
そして、懸念材料その2は、牧草の入手に関して。
この先も彼らの餌となる牧草が手に入るのかどうか、不確かなのだ。
だって、牧草の原産国はアメリカなどをはじめてとする海外だ。
はるばる、遠い国から海を渡ってくる。
つまり、日本の酪農は海外の牧草にかなり多くの部分を依存しているってことなのだ。
牧草がなくなったら、牛乳だって飲めない。
この先、世界情勢がどうなるかわからないし、関税のこともあるし、地球温暖化の問題もあるし、牧草がこれまでのように手に入るのかどうかも、不確実だと思うのだ。
だって、誰もがスーパーに行けば買えると思っていたお米だって、ないというではないか。
つまり、これから先は、お米だけでなく、それ以外のものでも、同じことが起きても全く不思議ではないと思っている。
そんなわけで、海と空は、一度実家に戻すつもりだ。
それまで、たくさん草を食べさせ、愛情を注ぎ、思いっきりハミハミタイムを満喫しよう。
まだまだ先だと思っていたら、私はもうすぐ北海道へ。
定山渓、楽しみだなぁ。
17日(土)は、第一寶亭留に先月新しくできた休日ビルヂングでの、トークイベントとサイン会。
日帰り湯でのイベントなんて初めてだし、北海道でのサイン会も初めてで、ワクワクする。
そして翌日は、隣接する風呂屋書店にて、静かなサイン会をさせていただくことになった。
11時から12時半頃まで、風呂屋書店内におりますので、サインをご希望の方は、そっとお声がけください。
「風呂屋書店での、静かなサイン会」
5月18日(日)11時から12時半くらいまで
入場料1100円(フリードリンク)
ご自宅の本棚にある小川糸の本をお持ちいただければ、そちらにもサインをいたします。
札幌近郊にお住まいの方は、ぜひ、この機会に風呂屋書店をのぞきにいらしてください。
お待ちしております!
当日の詳細や最新情報は、こちらでチェックしてください。
https://www.instagram.com/furoya_books/