スギナ茶

数日ぶりに山小屋へ行ったら、コブシが咲いていた。
足元には、福寿草の黄色い蕾も膨らんでいる。
森にも、遅い春が来つつある。

里の方は、春真っ盛りだ。
日に日に、緑が増えていく。
決して、植物たちが一斉に芽吹くのではない。
それぞれの子が、自分の条件が揃うのを待って、満を持して芽を出す。
まるで、元気な声で「おはよう!」と言っているみたい。
冬の長い長い眠りから覚めたばかりの植物たちは、この世の春を謳歌している。
まさに庭には、『歓喜の歌』が響き渡っている。

チューリップがかわいい、なんて言っていられるのも、あと少しだ。
ここからは、ぐんぐんと雑草たちが勢力を拡大する。
自分が植えた植物が、雑草に紛れてすっかりわからなくなる。
海と空に草刈りをお願いしたいが、彼らとて、何でも綺麗に食べてくれるわけではない。
草刈り要員としては、かなり荒っぽい仕上がりだ。

先週くらいから、スギナが顔を出している。
スギナは、トクサ科の多年生草本で、ツクシが枯れた後に芽を出す。
この春、ツクシは出なかったけど、スギナは庭の至る所に顔を出した。
確かに、杉に似ている。
出始めの姿はものすごくかわいいのだが、世間一般では雑草扱いだ。
それを人が有効に使えば、雑草から野草へと格上げされる。

私は、そんなスギナを待っていた。
今、せっせと摘み取っては乾燥させている。
スギナ茶にするのだ。
どうやら、とても体に良いらしい。

味は、昆布茶と緑茶を合わせた感じで、私にはなかなかの美味。
朝、スギナ茶を飲むのが楽しみになった。
体内の除湿をしてくれるのでむくみの解消にもなるし、カルシウムとケイ素が同時に取れるので、骨粗しょう症の予防にもなるという。
ノンカフェインで、安心して飲める。
自分の庭があると、こういうことができるようになる。

もしかすると、スギナ茶漬けにしてもおいしいかもしれない。
次にご飯を炊いたら、さっそく試してみよう。

スギナは、メェたちも喜んで食べている。
特に空は、スギナに目がない。
むしゃむしゃ、むしゃむしゃ、おいしそうに食べる。
メェたちがおいしそうに草を食んでいる姿を見ているだけで、私はものすごーく幸せな気持ちになる。

春は、本当に躍動感に満ち溢れている。
大地から、エネルギーがわーっと噴水みたいに吹き上げる感じだ。
花が咲く、というたったそれだけのことに、これほどの喜びを感じるとは!

毎日毎日、朝と昼と夕方でも、庭は表情を変える。
そんな変化を、間近に見られることが、とてつもない幸せに思えてくる。

今日は午後から、富士山がものすごくきれいに見れた。
もうすぐ5月だなんて、信じられない。