クリタケさん?

突如として、庭の切り株にキノコが出現した。
ここ数日、いろんな場所でキノコを見かけるけど、どうもこのキノコにはオーラがある。

もしかすると、クリタケ、かもしれない。
もしかすると、クリタケじゃない、かもしれない。
発見以来、頭の中で絶えず逡巡が続いている。

私は明日から出張なのだ。
今食べて、体調が悪くなったり、最悪の場合、死んでしまったりしたら、あまりにも周りにご迷惑をかけてしまう。
でも、食べたい。食べてみたい。
だって、こんなにおいしそうなのだもの。
しかも、このまま放置したら、食べ頃を逃してしまう。

とは言え、私はキノコに関してド素人だ。
スーパーで売られているナメコやエノキダケやエリンギや椎茸はわかるけど、野生のキノコとなると完全に未知の世界。
写真を撮ってご近所さんに送ったら、クリタケには見えるけど、さて? とのお返事が。

あなたはクリタケさんで間違いないですか?
それとも、クリタケモドキさんですか? はたまた、ニガクリタケさんなんてこともありえますか?
ニガクリタケは、毒キノコだ。

やっぱり今日死ぬわけにはいかないな、と思っていたら、山暮らしの先生でもあるご近所さんが、本物のクリタケを持って現物を見に来てくださった。
見た目は、本物に瓜二つ。
匂いも、変わらない。
まぁ、クリタケでしょう、と私が自分で判断し、自己責任でいただくことにする。

ご近所さんのアドバイスで、念には念を入れてしつこく加熱した。
まずは、お醤油味のお吸い物で。
なんと、美味!
だって、ついさっきまで生きていたのだ。
そして残りは、ゴボウのカレーに入れて。
あ〜、幸せ。
庭のキノコが食べられるなんて。
こんな日が、私の人生にやって来るなんて。
感無量である。

目標は、一年にひとつずつ、野生のキノコを覚えること。
一昨年は、ジコボウ。去年は、タマゴダケ。そして今年は、クリタケ。
そうやって、この子は絶対に大丈夫! を増やしていきたい。

柿も栗もそうだけど、足元に食べ物があるというのは、とてもラッキーなことだ。
お店で買えば、それなりのプラスチックゴミも発生するけど、身近なところからいただいてくれば、輸送のエネルギーもかからず、無駄なゴミも出ない。お金もかからない。
浮いたお金は、他に回すことができる。

この春屋根につけたソーラーパネルも、今は買っている電力より売っている電力の方が上回っている。
初期費用はそれなりにかかったけど、なんだかとっても気持ちいい。
これから寒くなって床暖房を入れると、売買の比率が逆転する可能性は高いものの、おそらく、年間を通して見れば、プラスになるはず。
これで車をプラグインハイブリッドにできれば、晴れて私は太陽光発電によるエネルギーで移動できることになる。

本日も、柿たちは朝から日光浴に忙しい。
空気がツンと冷たくて、お日様が出ているこういう日が、もっとも干すのに適しているのだ。
表面さえしっかり乾燥してくれたら、あとはそれほど過保護にしなくても大丈夫。
枝がTの字にならず紐に通せなかった子たちは、消毒したザルの上で、コロコロ、コロコロ。
みんな、健やかな干し柿へと育ちますように!

ぼちぼち、小鳥たちの餌箱も吊るしている。
春から夏にかけての時期はあげず、秋から冬、食べ物がなくなる時期だけあげるようにしている。
コガラ、シジュウカラなど、いわゆるガラ系と呼ばれる鳥たちが、来るわ、来るわ。
食後、柿の番も兼ねて外でコーヒーを飲みながら餌をついばむ鳥たちの様子を見ていたら、とても穏やかな気持ちになった。
まるで、孫の運動会を見ているような。
日が暮れるまで見ていたって飽きない。
今はまだ買っているけれど、来年からは、ノラコヤで向日葵を育て、鳥たちが食べる分のタネは自給しようと思っている。

そして、嬉しいお知らせが。
『小鳥とリムジン』の二度目の重版が決まり、これで3刷、5万5000部になった。
本当に、本当に、嬉しい。
時間に追われ、精神的にもなかなか本を開く余裕がなくなっている今の世の中で、多くの方がこの作品を手に取って読んでくださっていることに、心からの感謝を申し上げます。