カリンとマルメロ

先日、ちょこっと里暮らしをして、おや、と思ったことがある。
朝、小学生たちの通学時間に庭に出ていたら、聞き慣れない音がした。
子ども達の列から、鈴の音が聞こえるのだ。
もしや、熊鈴か?

一応、この界隈にクマはいないことになっているのだが。
でも、ちゃんと調べたら、ノラコヤからそんなに遠くない場所でも、目撃情報があったらしい。
ノラコヤの周りには、栗の木も柿の木もある。
クマが見つけたら、大喜びしそうな環境だ。
去年までは、ここは大丈夫、大丈夫、と呑気に構えていたけど、そうも言っていられない状況なのかもしれない。
子どもたちを外に出す親御さんたちは、お守りを持たせるような切実な思いで、熊鈴を持たせているのだろう。
来月ノラコヤに戻ってくる海と空が、ちょっと心配。

秋田をはじめとする東北は、本当に切実なクマ問題だと思う。
秋は、おじいちゃんやおばあちゃんが山に入って、キノコをとったりする季節。
そうやって喜びや現金収入を得ていた人たちにとっては、本当に気の毒で仕方がない。
人の手が入ることにより、山もまた整っていたことを思うと、これから山が荒れてしまうのが心配だ。
駆除されてしまうクマも、クマに襲われる人も、どっちも心から可哀想。
なんとかクマの暮らす場所と人の暮らす場所を分けて、お互いが相手を傷つけずに済む道を、長い目で計画して考えていかないと、これから先も同じような悲劇が繰り返されてしまう。

ノラコヤがあるのは典型的な里山で、民家のすぐ近くには田んぼが広がり、鎮守の森も点在する。
こういう場所をうまく残していかないと、と切実に思う。

昨日は、車通りの激しい国道に、鹿が一頭、車の列を縫うように飛び出してきた。
まだ日没前で早めに気づけたから良かったものの、夜で、もしもすごいスピードの車が走っていたら、と思うとゾッとする。
道路で犠牲になる野生動物を見るのは、本当に本当に胸が痛む。
どうか、そのことを念頭に入れ、たとえ他の車が走っていなくても、スピードを出しすぎずに運転してほしい。
たまに、いるのだ。
ものすごいスピードで、我が物顔で夜道を疾走する人が。

ところで、やっぱり逆だった。
カリンと、マルメロ。
カリン、と書いてあったので買って袋を開けたら、毛むくじゃら。
カリンはつるんとしたすべすべのお肌だけど、マルメロは産毛が生えている。
欲しかったのはカリンの方なんだけどなぁ、と思いながら、一つずつ、キッチンペーパーでマルメロの産毛の処理をする。

どうしてこんなことになってしまったのか。
長野では、カリンとマルメロが、逆なのだ。
カリンはマルメロで、マルメロはカリン。
ややこしいにも、程がある。

でも、どちらも甘くていい香りだし、形も似ている。
カリンは喉の炎症にとても効くので、この時期、はちみつに漬けておくと、いざ風邪を引いて喉が辛い時などに、重宝するのだ。
マルメロにも同じ効果が期待できるのかどうかは、わからない。

ただ、カリンは一本で実がなるのに対して、マルメロは自家結実性が低く、別の種類のマルメロを近くに植えないとなかなか実を結ばない。
似たもの同士だけど、結構違うのだ。

とは言え、そのままマルメロを置いておくのもなんなので、はちみつ漬けを作る。
なんとなく、マルメロの方が柔らかくて、水分が多い気がした。
カリンの場合はなかなか水が上がってこないけど、今回のマルメロは、一晩はちみつに漬けたらすぐにシロップ状になった。
これで、喉に効いてくれれば問題ないのだが。
このカリンとマルメロの逆転現象、なんとかしてほしい。

お山はもうすでに、冬の空。
晴れマーク続きで、連日青空で気持ちがいいのだ。
お日様さえ顔を出してくれたらポカポカだし、洗濯物は夏よりもよく乾くし、太陽光発電も絶好調で言うことなし。
ついに、私の大好きな季節がやって来た。