お泊まり会

週末は、里の友人が来てお泊まり会だった。
彫刻家の友人は、ミラノで展示会をして帰ってきたばかり。
彫刻の本場で、日本人の作品が展示されて人々を魅了するなんて、本当にすごいことだ。

お互いにお酒を嗜むので、どこか外のお店だと、帰りが困る。
だから、夕方集合して、ゆるゆるとお酒を飲み、山小屋に泊まって翌日帰るというパターンが、もっとも楽ちんなのだ。
翌日用事があるなら、朝起きてすぐ帰ってもいいし、のんびりできるなら一緒にダラダラ過ごす。

友人はベジタリアンなので、野菜料理を準備して待っていた。
と言っても、至極簡単なものばかり。
白インゲン豆を圧力鍋で調理したら柔らかくなりすぎたので、ポタージュにする。
入れたのは、玉ねぎと蕪と、白インゲン豆、ノラコヤ産のイタリアアンパセリ。
最後にふと思いつき、酒粕と白味噌を入れてみた。
これが、大正解だった。
酒粕と白味噌で、今までになかったアクセントが出て、体もほかほかと温まる。
最近、粕汁を作っていたので、それの応用編である。

あとは、キャベツを薪ストーブの中で焼き、オリーブオイルと味噌のソースで食べる。
事前に作ってあったおやきは、ムッティのオーブンで温めた。

おやきの具、今回は小豆かぼちゃと焼きリンゴ。
小豆もかぼちゃも、別々にならおやきの具で存在するけど、一体となったのは、未だかつて見たことがない。
祖母がよく、冬至になると小豆かぼちゃを作ってくれた。
小豆かぼちゃは、私にとって冬のご馳走である。
水分が出ないから、おやきの具にするにはちょうどいい。

ちなみに、かぼちゃはノラコヤの外のテーブルに、ポツンとひとつだけ置いてあったもの。
小ぶりで軽かったけど、炊いたらホクホクでものすごく味が濃かった。
未だに誰が持ってきてくれたのか、わからない。

冬は、薪ストーブで調理するのが一番だ。
ただ焼くだけでも、おいしくなる。
あとは、炎を見ながら、のらりくらり団欒する。
冬の醍醐味だ。

熱くなったら、酔い覚ましに外に出て、星空観察。
寒なったら、戻って一杯。
こんなことを繰り返しているだけで、あっという間に夜が更ける。

翌朝は、りんごの食べ比べ。
最近気に入っているのは、スリムレッドだ。
もう、笑っちゃうくらい、そのまんまのネーミング。
ほっそりとして、真っ赤なりんごなのだ。
もうひとつは、サンフジ。
今は他に、フジやシナノスウィート、秋映、紅玉なんかが出回っている。

ちゃんと品種まで意識して選ぶと、りんごの奥深さがより理解できるようになった。
小ぶりで、不揃いなりんごを見つけたら、私は迷わず買うようにしている。
だって、大きさの揃った立派なりんごより、そっちの方がおいしいんだもん。
りんごって、見ているだけで本当に幸せな気持ちになる。

結局、一緒に森をお散歩し、昨夜の残りのポタージュと、彼女が持ってきてくれたパンをランチにして、お開きとなった。
どこかに行ってランチをするよりも、こういう時間の過ごし方が、一番好きだ。
同じ音楽に耳を傾け、同じ景色を見ているだけで満たされる。

山小屋にもノラコヤにも、彼女の作品が置いてあるから、一緒に住んでいるような感じだけど。
冷たくて硬いはずの石が、彼女の手にかかると、温かくて柔らかいものに思えるから、不思議だ。
ひとえに、彼女の穏やかな性格や朗らかな生き方が、そう感じさせるのだろう。

昨日から、おろしが吹いている。
あまりの凄さに、眠れないほどだった。
天気予報を見ると、今週の半ばから、最低気温が−6、−7、−6、−6と、驚くような寒い日が続いている。

でもまだ私とゆりねは、山小屋で踏ん張っている。