『キラキラ共和国』

前作、『ツバキ文具店』を刊行してから、本当にたくさんのお手紙をいただいた。
これまでも読者の方からのお手紙や読者カードはいただいていたけれど、数としては、圧倒的に多かった。
多かったし、内容も濃かった。
私はその方を直接は存じあげないけれど、便箋の選び方や筆跡、言葉遣いから、その方の人となりを想像する。
手紙はまるでその人の分身みたいで、お会いしたことはないのに、なんとなくうっすらとその人の輪郭や佇まいが見えそうになる。
中には、ポッポちゃんにこんな手紙を代書してほしいという依頼や、本当にこんなことが現実に起こるんだ、とこちらが驚かされるような人生の一大事について告白してくださる方もいた。

手紙を書くという行為は、相手に何かを伝えるという意味もあるけれど、自分自身の心を鏡に写すようなものでもあるのだな、とたくさんいただいた手紙を読みながら思った。
落ち着いて手紙を書くことによって、自分の心と対話し、自分が今、何を考えて感じているのかを知ることができる。
私にとっても、物語は読者の方に向けて書いた、長い長い手紙のようなもの。
その手紙を受け取った相手から、更に返事をいただくというのは、書き手としてこの上ない幸せだった。

その中でとても多かったのが、続編を書いてほしい、という声。
今まで私は、そういうことをしたことがない。
物語は、一冊出たら、そこで完結する、と思っていた。
でも、こんなふうに読者の方とつながれて、自分自身が、すごく温かいものをいただき、この世界にまだ浸っていたいような気持ちになった。
それで、たまには続編という形で物語が続いていくのもいいかなぁ、と思い、『キラキラ共和国』を執筆した。
鳩子が、私自身の人生に寄り添い、時に手を取り、時に叱咤激励する相手になってくれたら、嬉しい。
私は、そういう心の友というか、人生の戦友みたいな存在を、求めていたのかもしれない。
先のことは、まだ何もわからないけれど。

心にキラキラを思い描くって、大事なことだなぁ、と実感する。
人生には、思いもよらぬ災いがいきなりふりかかってくることだって、ありえる。
自分のせいではないのにすべてを背負って苦しんだり、悲しみに打ちひしがれて涙を流したり、そんなつもりはないのに結果として相手を傷つけてしまったり、ままならないことがたくさんある。
でも、そういう真っ暗な状況にあっても、どんなに遠い場所からでも、明るい方へ顔を向けられるようでありたいと、私自身は思っている。
植物が、光を求めて芽を伸ばすみたいに。
そうして生きていれば、そんなに悪いことばかりが起こらないんじゃないかなーと、私は結構、楽観的に考えている。

今回も、幻冬舎の君和田麻子さんが、担当編集者として伴走してくださった。
字書きの萱谷恵子さん、画家のしゅんしゅんさんには、それぞれ字と絵をかいていただいた。
全く同じメンバーで仕事ができるというのもまた、続編ならでは。
一冊の本の陰には、多くの方と努力と愛情がある。

お世話になったすべての皆様、そして読者の方々、本当に、本当に、ありがとうございます。

ポッポちゃんやモリカゲさん、QPちゃんや男爵やバーバラ婦人が、まるで読者の方のご近所さんのごとく、身近な存在になれたらいい。
そして、本を閉じた時、「大丈夫だよ!」というちょっと能天気な明るい声が聞こえるような物語を、私はこれからも書いていきたい。

2017年11月
小川糸