春を待つ
冬の寒さはまだまだこれからが本番だけど、冬至を過ぎたら、なんとなく春を待つ気持ちが強くなってきた。
これから夏至に向けて、また少しずつ陽が長くなる。
そのことに、大きな喜びを感じる。
この冬は、植物たちと一緒に、森で過ごす。
彼らがすごいなぁと思うのは、もうすでに秋の終わり頃には、葉芽や花芽をつけていること。
準備万端の状態にしておいて、それから寒い冬に挑むのだ。
そして、春の暖かい光を待ちわびる。
森にはシャクナゲが自生している。
シャクナゲは毒性があるので、シーも食べない。
ここに来るまではシャクナゲってそんなに好きな植物ではなかったのだが、生態を知れば知るほど、賢くて、魅力を感じるようになった。
今、シャクナゲの葉っぱはげっそりしている。
骨と皮だけの骸骨みたいで、どの葉っぱもシュッと小さく丸まって下向きに垂れ下がっている。
これは、葉っぱから幹に水分を移し、細胞内の水分濃度を高め、結果として凍結するのを防ぐためだという。
他にも、そうすることで耐寒性を高めたり、葉っぱからの蒸散を抑えることで乾燥から身を守ったり、光の当たる面積を少なくすることで、活性酸素の発生を抑えたり、しているらしい。
驚くのは、お日様が顔を出して気温が高くなると、あれよあれよという間に葉っぱが元の姿に戻るのだ。
その時々の環境に合わせて、自在に変化する。
なんだか、パッと姿を変える宇宙人というか、知的生命体のよう。
そんな高度なテクニック、人間には到底できない。
本気ですごいと尊敬する。
先日、ノラコヤに植えた柑橘類とオリーブの木を、慌てて山小屋に連れてきた。
私からするとノラコヤは十分暖かいのだが、どうやら客観的に見るとそこもまた寒冷地に属するようで、要するにノラコヤの土地の環境では、寒くて越冬できないというのだ。
それは大変と、スダチ、ハナユズ、レモン、金柑、そしてオリーブの木を鉢に移し、山小屋の室内に運び込んだ。
今、彼らは雪景色を見ながら窓辺でぬくぬくしている。
部屋の中に植物がいるというもいいものだ。
なーんとなく、植物には気配がある。
ゆりねよりももっとぼんやりとした、存在感とまでも言えないくらいの、ほんのりと淡い気配だ。
だからこの冬山小屋は、私とゆりねと植物たちで、賑やかだ。
窓の向こうの森の木々たちも含めて、みんなで励まし合いながら寒さに耐え、春を待っている。
どうぞ、よいお年を!