ひょっとして?

里で野良仕事をしていて、おや? と気になる植物を見つけた。
似ているのだ、ヒョウに。
正式の名はスベリヒユ。全国どこにでも生える雑草である。

その雑草を、食糧難を乗り越えるため、上杉鷹山が食べるのを奨励したので、以来、山形ではヒョウを食べる習慣ができたらしい。
日本でヒョウを食べるのは、山形と、あと沖縄だけ。

葉っぱがぷくっとしていて、茎が赤みを帯びている。
これはヒョウだよな、間違いなくヒョウだよな、と思いながら、その場で葉っぱを齧ってみた。
山小屋に戻ってもう一度ちゃんと調べたら、やっぱりヒョウだった。

山形の人は、ヒョウを食べる時、「ひょっとして、いいことがあるかも?」という願をかけるそうだ。
その控え目な感じがいかにも山形の人だなぁ、と微笑ましく思う。
ヒョウは、お浸しにして食べるのが一般的で、私もうっすらとだが、幼い頃に食べた記憶がある。
ちょっと滑りがあって、ほんのり酸味がある。
そっか、だからスベリヒユを漢字で書くと「滑莧」なのか、な?

ものの十分もつむと、カゴがヒョウでいっぱいになる。
これだけあれば、十分だ。
山小屋に戻り、さっそくゆがいた。
お浸しはもちろん、私はごま油で和えてナムルにして食べるのも好き。
お味噌汁の中に入れてもいいし、モヤシの代わりにラーメンに加えるのもアリかもしれない。

実は、ちょっと前、ヒョウがノラコヤの畑にあったらいいな、と思って、どこで苗が手に入るのだろう、と考えていたのだ。
もしかすると、山形の道の駅とかに行けば売っているのかな、と。
わざわざそんなことをしなくても、そこに生えていたのだから、嬉しい嬉しい。
これから、食べ物がなくなって困った時は、ヒョウをつんで食べればいい。

初夏に植えたイチジクの苗木にも、小さな実がひとつついているし、この先、果樹が大きく育つのが楽しみだ。

そして、もうひとつの、ひょっとして? は一昨日の夜のこと。
9時ちょっと前、もうそろそろ寝る準備を始めようかと思っていたら、窓の向こうでバサバサと大きな音がする。
何? と思って見たら、明らかに生き物の顔があるのだ。

三角の耳がピンと立っているので、最初は猫かと思った。
でも、いくら運動神経抜群な猫でも、階段も梯子も使わずに、2階の窓までは上がれない。
え、ひょっとして、あなたは?!?

お目目がまん丸で、ものすごくかわいい。
窓のところで羽をばたつかせながら、興味深そうに山小屋の中を覗き込んでいる。
視線の先にいるのは、まどろむゆりねだった。
こんなに近くでフクロウを見るのは、初めてだ。
夜、鳴き声も聞いたことがなかったから、まさかフクロウが身近にいるとは思っていなかった。
もしかして、森の木に巣をかけたら、フクロウが住んでくれるだろうか。
またひとつ、やりたいことが増えてしまった。

もしや、ヒョウが運んできた「ひょっとして?」は、フクロウだったのかな。
また会いたいな。
でも、夜の明かりは野生動物を混乱させてしまうのかもしれないので、夜になったらロールスクリーンを下ろしておいた方がいいのかもしれないな。