防寒対策

さっき、ゆりねと外を歩いていたら、道路を横断した先で、急にゆりねがおじさんの方へ近づいていった。
そのまま、おじさんの足元に体を寄せて、すりすりする。
基本、人懐こいゆりねだけど、そこまで自然に近づくのは珍しい。
おじさんも、しゃがんでゆりねをナデナデ。
マスクをしているので、顔はあまりわからないけど、とても優しそうな方だった。

それから、いつもの散歩コースに戻って遊歩道を歩いていたら、またおじさんがやってくる。
向こうから手を振って、ニコニコ顔でゆりねに近づいた。
今度はマスクを外しているので、表情がわかる。
ゆりねは、またおじさんの方へ吸い寄せらせ、まるで旧知の友人に再会したかの気やすさで、おじさんに撫でられていた。

目を細めたおじさんが言った。
「ちょうどね、1年前の1月28日に、うちのワンコが旅立ったんですよ。
だから昨日は、一歩も外に出られなくて。
でも今日は、お天気もいいし、外に出てみようと思ってね」
「何犬だったんですか?」
「コッカースパニエル。15歳と2ヶ月だったから、天寿を全うしたんですけどね」
おじさんにとって、この1年は、愛犬を失った悲しみと向き合う、辛い時間だったのだろう。

「ゆりねは偉いね」
おじさんと別れてから、ゆりねに話しかける。
だって、ゆりねはちゃーんと、自分の役割を果たしている。
きっと、ゆりねは何かをおじさんに感じたのだろう。
そういう優しさが、ゆりねには確かに備わっている。
自分を必要とする人の元へそっと自ら寄り添って、ふわりと抱きしめるような包容力が。
天性の才能かもしれない。

この冬は暖冬だと思っていたら、ここに来て寒波がやって来た。
雪こそ降らないものの、東京も寒い。
山小屋に、最強の防寒ブーツを置いてきたことが悔やまれる。

先日、新潟の山奥で湯治をしていた時、脱衣所で着替えていたら、隣合った女性にびっくりされた。
「随分、厳重ですね」
私の重ね着に驚いたらしい。
「お風呂上がりに、冷えちゃうと嫌なので」
私は言った。

防寒対策には、自信がある。
まず、最近のお気に入りは、マタニティー用のスパッツ。
スパッツと腹巻きが一体になったようなもので、これだと、お腹をすっぽりと覆ってくれるので暖かい。
私は、その上から毛糸のパンツを重ね着する。
これも、おへそまでしっかり隠れるタイプで、冬場は決して手放せない。

靴下は、もちろん、2枚重ねてはく。
最近気に入っているのは、登山用の靴下で、これはとてもしっかりしている。
あと、看護師さんなんかが勤務中に履く、膝上まである五本指ソックスも愛用している。
その上から更に保温性の高い分厚い靴下を履き、室内でもブーツを履く。
ブーツの中には、つま先を暖めてくれる靴用のカイロを入れる。

この冬手に入れたカシミアのスヌードは最高だ。
ふんわりと柔らかい触感がたまらなく、寝る時以外は1日中首に巻いている。とにかく、首と名のつく場所を冷やさないことが大事。

それでも寒いと感じる時は、カイロのお世話になる。
あまり肌に近いと逆に暑すぎるので、一番外側の服に貼るなどして、温度を調節する。

この防寒対策で、基本、朝も昼も暖房をつけない。
一番弱い温度で床暖房をつけるのは、夕方から寝るまでの時間帯だ。
部屋全体を温めるより、ピンポイントで自分だけを集中的に温めている。

夜は、布団を5枚重ねて寝る。
私は、羽毛布団だと、暑くてすごい寝汗をかいてしまうのだ。
それで、夏用の綿布団や毛布を重ねて、温度を適温に調節する。
布団に入る30分ほど前に、チェリーピローを電子レンジで温め、足元に入れておく。
湯たんぽもいいけど、私は便利なのでチェリーピローを愛用している。
温泉のお湯に入っているのも、体を温かく保つのに、一役買っているかもしれない。

さっきゆりねと歩いていたら、梅が咲いているのを見つけた。
黄色い蝋梅も満開だった。
春、がんばれ!

今夜は、満を持して百合根の天麩羅を食べよう。
北海道、ニセコの百合根である。
共食いになるので、ゆりねはまだ百合根を食べたことがない。