ペンギンと暮らす

さまよう人たち

2019.06.17 Mon

中国人のアーティスト、アイ・ウェイウェイ氏が撮ったドキュメンタリー映画を見た。
タイトルは、『ヒューマン・フロー 大地漂流』。
彼は、世界中の難民キャンプを訪れ、難民たちの声に耳を傾け、その現場を映像におさめた。
自分自身も、中国政府を批判した見せしめに、身柄を拘束されたりパスポートを没収されたりした経験があるから、難民に対してもこころを寄せることができるのだろう。
今は、ベルリンに拠点を移して、活動しているとのことだった。

難民と言っても、気候変動によるものや紛争、貧困など、国を追われる理由はいろいろある。
これ以上破壊できないくらい粉々に破壊された町の跡が、痛々しかった。
ある、片手を失った男性は、ISの戦闘員でなければ、病院で治療を受けることも薬をもらうこともできないのだと嘆いていた。
世界最大の監獄、天井のない監獄と言われるガザに住む若い少女たちは、ガザを出たいのではなく、ただ好きな時に出て、世界を旅して、また好きな時に帰りたい、それがしたいだけだと言っていた。
彼らは何も、ものすごい大きな家に住みたいわけでも、大金を手にしたいわけでもなく、ただ、毎日食べ物に困らず、家族とともに、安心して笑顔で過ごすことを願っている。
そんな、人としての基本的な幸福すら奪われ、着の身着のまま、命からがら逃げる。
子どもが、生まれる親を選べないように、生まれる国もまた、選ぶことができないのに。

難民の数は、過去最多となっているそうだ。
そして、それにともなって、世界中に建設された「壁」の距離も、どんどんどんどん長くなっている。
壁によってもたらされる平和は、所詮、かりそめの平和にしかならないと思うけど。
世界中で、本当に本当に一握りというか、数えられるほど限られた人だけが巨額の富を独占し、そんなお金どう考えたって使い切れるわけないのに懐に溜め込む一方、世界中の多くの人たちが、貧困にあえいでいる。
そこに溜め込んでいるお金を、こっちの人たちに分けてあげれば済む話なのに。
この不均衡というか、不平等は、なんなんだろう。

難民となった人たちは、平均すると25年、そういう生活を余儀なくされるとのこと。
人としての尊厳や誇りを持ち続けることが、とても大事なのだと、ある難民支援に携わる女性が話していた。
これから気候が厳しくなったら、ますます、人が快適に生きられる場所は少なくなる。
食料や水を求めて、命を奪い合う過酷な時代が来るのを想像すると、恐ろしい。
とにかく、このままでは絶対にいけないと思った。

日本にいると、難民という生き方を強いられた人たちが遠い存在に思えるけれど、ヨーロッパでは、もっと身近な問題だ。
わたしは、最近日本語でよく見聞きする、「ランチ難民」とか「買い物難民」とか、〇〇難民という表現が、気になって仕方ない。
もっと、当事者の苦悩に寄り添うべきじゃないだろうか。
そして、自分は幸い、日本という国に生まれて恵まれた生活を送っているけれど、もしかしたら自分も難民にならざるをえなかったかもしれない、そのことを忘れてはいけないと思った。

とてもいいドキュメンタリー映画だったので、ぜひ、多くの人に見てほしい。