キリンの命と人の命

知床半島沖の海上で、観光遊覧船の遭難事故が起きた。
乗客と乗員を含め、26人が乗船していたという。
冷たい海に投げ出された方達のことを思うと、本当に胸が張り裂けそうになる。

今月中旬、ひまわりという名の一頭のメスのキリンが、トラックでの移送中に命を落としたという。
ひまわりは1歳8ヶ月で、神戸市内の動物園で飼育されていたが、繁殖のため、オスのいる岩手の一関まで、22時間かけて運ばれる途中の事故だった。

ひまわりは、頭までの高さが、約3メートル。
けれど、トラックの荷台に積まれたオリは、高さが2メートル65cmしかない。
道路交通法にのっとって、そうせざると得なかったとのこと。
ひまわりは、立った状態ではなく、脚を広げた状態で、首を前に伸ばした姿勢で収容された。

神戸を出て10時間後、新潟市内のパーキングエリアで、ひまわりが倒れているのが見つかったそうだ。
姿勢を変えようとして転び、狭いオリの中で首が折れ曲がってしまった。
死因は、呼吸不全と循環器不全。
痛かっただろうに。苦しかっただろうに。
私は、ひまわりが不憫でならない。

キリンの命も、海に投げ出された26名の人間の命も、どちらも本当にかけがえがなく、尊いもの。
無くならなくてもよかった命だ。
一体、これらの命と引き換えにして得たかったものとは、なんだったんだろう。
どちらも、判断を下した責任者や関係者を責めるのは容易いけれど、問題は、そこだけではないような気がする。

心より、ご冥福をお祈りします。