なめこちゃん
山形から、天然のなめこが届いた。
なめこ、大好きなのだ。
ベルリンにいた時は、乾燥なめこをちびちび使って料理していたほど。
でも今は日本にいるので、好きなだけなめこが食べられる。
そして、天然のなめこは、すんばらしく美味しい。
なんなら、松茸よりもわたしは価値があると思っている。
実は、先週の木曜日の夜中、思いっきり具合が悪くなった。
年に一回くらい、忘れた頃にやってくる強烈な腹痛。
夜中におなかが痛くなって目が覚めるのだけど、今回は本当にひどくて、一晩中うなされ、一睡もできなかった。
体に合わない何かが入ってしまい、それが体の冷えとか、疲れとかと重なると、とんでもないくらいお腹が痛くなる。
普段お腹は丈夫な方だと自覚しているけれど、本当にたまーに忘れた頃にやって来るのだ。
あーまたあいつがきたな、と頭ではわかるのだが、思うように体が動かせない。
おそらく、出産の時の痛みというのはあんな感じなんじゃないかと思う。
意識が朦朧として、自分が自分でなくなっていく。
そんなわけで、金曜日は一日中パジャマで過ごし、ベッドで横になっていた。
当然ながら銭湯にも行けず、むしゃむしゃと林檎だけかじって過ごした。
週末、カイロの予約を入れていたのでそのことを先生に話したら、触診でお腹をみながら、それは胆嚢が原因かもしれないという。
ずっと胃の問題かと思っていたのでびっくりした。
何か脂っこいものを食べませんでしたか? と質問され、その日の夜に食べたのが焼きそばだったことを思い出す。
思い当たるのは豚肉だ。
古い豚の脂をなんとか消化しようとして肝臓が胆汁を大量に生産し、それを胆嚢に送ったものの、それがうまく胆嚢から出されなくて痛みが発生したと考えられるとのこと。
確かに、胆嚢の場所が激痛の発信源だった。
足の裏も見てもらうと、ズバリ胆嚢のところに硬い塊ができていた。
体が冷えていたり、アルコールを飲んだりして内臓の働きが弱っているところに消化しづらいものを食べると、今回みたいなことになってしまうのかもしれない。
もともと、お肉はそんなに食べないし、食べるとしても赤身にしていたのは、無意識のうちに体が自分の弱点を察して、防御していたのかも。
お肉の代わりに、年々、山菜やキノコがおいしいと思うようになってきた。
だから、病み上がりの体に、なめこはものすごくありがたかった。
ただ、天然物ゆえ、すぐには食べられない。
山の葉っぱや土などがついてくるので、まずはそれをきれいに洗う作業から始める。
水を取り替え取り替えしながら、1キロの天然なめこを、きれいに掃除した。
これを、鍋に入れて、練るのであるが、「練る」と言う表現は、山形独自のものらしい。
とにかく、水分を出さず、火にかけるのである。
そうすると、なめこからだんだんぬめりが出てくる。
気にせず、完全に火が通ってしんなりするまで練るように鍋底からかき混ぜるのだ。
最後に、私は少々の日本酒と醤油で味をつけておく。
この状態にしておくと、大根おろしで食べてもいいし、おそばにのせて食べてもいい。
今夜は、なめこのショートパスタを作った。
里芋とレンコンとごぼうとニンニクを出汁で炊き、そこにカツオのなまり節も細くして入れる。
普段だったらベーコンでやるのだけど、今日はお肉を食べたくないので、なまり節を使ってみた。
そこに、ある程度茹でたショートパスタを加えて、数時間、味をなじませておく。
そして、温めなおすときに、なめこをたっぷり入れた。
薬味には、芹をのせる。
あつあつに、オリーブオイルをかけていただく。
まるで、洋風すいとんのよう。
野菜からいろんな味が出て、何よりもなめこの存在感が輝いている。
体調が悪かったのが嘘みたいに、たくさん食べられた。
名付けて、健康パスタ。
なめこって、どうしてこんなにおいしいんだろう?
わたしは今、なめこの余韻に浸って恍惚としている。