ご近所さん
二度あることは、三度ある。
ただ今、三度目の緊急事態宣言中だ。
再び、ステイホームの日々。ステイだのゴーだのって、犬になった気分だワン。
ひろえちゃんと、オンラインで飲み会をした。
もう彼女はベルリンを離れ、今はフランスのマルセイユにいる。
ベルリンで使っていたわたしの家具の多くが、マルセイユへ引っ越した。
リビングに敷いていた薄紫色の絨毯を見て、懐かしくなる。
ご近所さんだったのにな。
ベルリンにいた頃は、じゃあ30分後にそっちに行くね、なんてことが、平気で言えた。
みゆきちゃんもご近所で、うちの前の公園に集まって、夕暮れを見ながらビール飲んだりしてたっけ。
そんなの当たり前だと思っていたけど、もう誰もベルリンにはいなくなった。
ひとりは、地上すら離れて、遠い遠いところに行ってしまったし。
あの頃、三人がベルリンにいて他愛もない話題で盛り上がっていたことが、奇跡に思える。
向こうはランチ、こっちはディナーの時間に合わせて乾杯をした。
ひろえちゃんは赤ワインを、わたしは丹波ワイナリーのプシュプシュを飲む。
それぞれ前におつまみを用意して、あーだこうだと言いながら、飲んで、食べて、ゲラゲラ笑う。
楽しかった。
こういう時間って、必要だと痛感する。
不要不急の外出を控えるようにとのことなので、行動範囲はもっぱらご近所だ。
だから、一日に一回、ゆりねを連れて散歩をすることが、いい気休めになる。
この一年で、気さくに話せる犬友もできた。
いろんな犬がいるなぁ。
去年、コロナの真っ最中に生まれたチワワは、大事な幼少期に犬と接する機会が少なかったため、散歩で他の犬と会っても、怯えてしまうのだとか。
そういう影響は、人間だけでなく、犬にも現れている。
この間は、もう足腰が弱って自力では歩けない老犬のダックスフントに会った。
ゆりねが素晴らしいと思うのは、どんな犬にも尻尾を振ってフレンドリーに近づいていくところだ。
ものすごく社交的で、相手にいくら無視されようが、決してめげない。
ものすごく大らかな性格には、本当に感心するし、尊敬もする。
滅多に怒らないのだが、相手が本当に失礼な態度(例えば、いきなり吠え立ててこちらを威嚇してきた時など)、どこの犬かと思うくらいの低い声で、「いくらなんでもその態度は失礼だろ!」というようなことを訴える。
その声は、ゆりねの風貌と全く似つかわしくなく、そのたびに飼い主が度肝を抜いているのだ。
まぁ、そういう声を聞くのは、一年に一回くらいだけど。
ゆりねだって、怒る時は本気で怒る。
振り返ればこの一年、週末のヨガにもずいぶんお世話になった。
定期的に一番よく会っていたのは、ヨガの先生かもしれない。
ヨガのおかげで、生活にメリハリができていた。
今回の緊急事態宣言で、わたしが毎日のように通っている銭湯がどうなるのかまだわからない。
ここも閉じてしまったら、結構、こたえる。
銭湯は、わがオアシスなのに。
今、秋田から芹が届いた。
さすが、産地直送だ。スーパーで売られているなよっとした芹とは気合が違う。
芹を、お腹いっぱいになるまでむしゃむしゃ食べたい。
その願望が、ようやく今夜、叶えられる。
今夜は、しゃぶしゃぶ。
豚肉以外の野菜は、芹と椎茸のみ。