お雑煮解禁

そろそろ寒くなってきたので、お雑煮を解禁することにした。

お雑煮をお正月だけ食べるなんて、もったいない。

せっかく日本にいて、お餅もそこまで貴重品ではないのだし。

実家のお雑煮は、鶏肉とゴボウと芹と白滝と椎茸と人参なんかが入っていた。

材料から察すると、秋田のきりたんぽに近いのかもしれない。

お醤油味で、都会的な洗練された感じではないけれど、なんだか体が芯からポカポカするような、具沢山のお雑煮だった。

気がつけば東京で暮らしている時間の方が人生の半分以上を占めるようになり、お雑煮といえば関東風が主流になった。

関東風の味を教えてくれたのはペンギンだ。

結婚した当初、昆布と鰹節で正式に出汁をとるのは、お正月だけだった。

そしてそれは、お雑煮のためだった。

関東風のお雑煮の主役は、出汁なんじゃないかと思う。

鶏肉からも、小松菜からも、なるとからもちょっとずつ味が滲み出て、柚子の香りと合わさり、なんとも言えない背筋の伸びた気高い感じの味になる。

関東風はわたしの中でキングオブお雑煮なので、それはさすがにお正月だけにとっておく。

そんなわけで、ふだん使いのお雑煮としてメキメキと頭角を現しているのが、京風の白味噌雑煮だ。

なんて書くと、京都の方から、うちのお雑煮だってハレの日の雑煮どすえ〜、なんて厳しいご指摘を受けそうだけど。

ふわっふわの丸餅に、まったりとした白味噌の甘さが、癖になる。

最近知ったのだけど、丸餅は、茹でるよりも電子レンジでチンした方が、断然うまくいく。

調理に電子レンジはあんまり使いたくないけど、ここは仕方がない。

丸餅を茹でると、どうしてもお餅がお湯に溶けてドロドロになってしまう。

けれど、電子レンジを使うやり方だと、まるでつき立てのお餅のようにふんわりできる。

やり方は簡単で、器に丸餅をのせ、そこに熱湯を(お餅の半分が浸かるくらい)注いで、電子レンジで40秒ほど温めるというもの。

病み上がりだったこともあり、今朝は、ことのほか白味噌雑煮が食べたかった。

横着して出汁パックで出汁をとり、そこに白味噌を溶いてグツグツ。

お味噌は煮立てちゃいけない、と思っていたけど、白味噌に関しては煮立てないとまったりしないなんてことも、知らなかった。

電子レンジでチンしたお餅をお碗に移し、とろとろのお汁をかければ、白味噌雑煮ができる。

ものすごくシンプルだけど、ものすごく奥深い味だ。

本式のは、これにもう少し具が加わるのかもしれないけど、わたしはこれで十分満足だ。

白味噌は体を温めてくれるというから、これからの季節は、お味噌汁にも、少し、白味噌を混ぜようと思っている。

午後は、読者の方から届いたお手紙を読ませていただいた。

よく、本当に著者まで手紙が届くのだろうか、という不安を書かれている方がいらっしゃるけれど、心配しなくて大丈夫です!

読者カードもお手紙も、出版社に送ってくださったお便りは全て、編集者さん経由でわたしのところに届けられますので。

そして、必ず読みますので。

ただ、まとまって届いたお便りをいつでも読めるかというと、そんなことはないのが正直なところだったりする。

手紙を書くのに時間や勇気が必要なように、手紙を読むのにもまた、時間と勇気が必要だ。

簡単に言うと、心が健康な時じゃないと、向き合えない。

だから、場合によっては、読者の方が書いてくださってから、時間が空いてしまう場合もある。

読者の方が書いてくださる手紙は、一通一通が、わたしにとっては本当に宝物であり、大袈裟なようだけれど、魂のご飯というか、次の作品への原動力というか、とにかくそれくらいありがたく、貴重で、何物にも代えがたいご褒美だ。

今日も、一通読んでは、慌ててティッシュを抜き取ったり、クスッと笑ったり、深々と頭を下げて感謝したくなった。

感謝の気持ちを伝えたいのはわたしの方であり、たくさんのたくさんの勇気をいただいて、胸がいっぱいになる。

今日読ませていただいた手紙には、「お母さん」について触れている内容が目立った。

たまたま今朝の新聞に青木さやかさんの記事が出ていて、それは、母親が亡くなってからでも親孝行はできる、という内容で、わたしもすごく同感でしんみりしてしまったのだが、本当に、母と娘というのは、なかなか難しいものなのだ。

これは、当事者同士にしかわからないし、簡単に第三者が立ち入って意見を言える領域ではない気がする。

もちろん、生きているうちになんとか和解できれば、自分も相手も双方ともにいいとは思うけれど、たとえそうならなくても、手遅れということはないのだと思う。

一通ごとに、手紙の封筒を眺めては、こんな切手があるんだぁ、と新たな発見をしたり、読者の方からのヒントで、いつかそういうテーマの物語も書いてみたいなぁ、とひらめいたり、送り主の方のお名前を読んで、物語の登場人物の名前が浮かんだり、お世話になりっぱなしなのだ。

本当は、お一人お一人にお返事を書きたいのだけど、ごめんなさいね!

現実的に難しいので、物語という形で、お返事にかえさせていただいている。

読者の方からいただいたお手紙はもちろん全部わたしの手元にあり、最後はわたしが死んだ時、棺桶に入れてもらうことに決めている。

それがわたしの、密かな楽しみ。