おじいさんと犬
ゆりねを連れて、近所を散歩していた時のこと。
人懐っこい芝犬が、近づいてきた。
ペンギンが手を差し出して挨拶していると、飼い主のおじいさんがいきなり言ったそうだ。
「パパになってよ」
そして、自分の持っているリードを渡そうとした。
聞けばおじいさん、心臓の手術をしたのだという。
もともとの持病があったところに、最近、がんも見つかった。
さすがにもう自分の力ではこの子を飼えないと判断し、こうやって散歩しながら、新しい飼い主を探しているのだとか。
芝犬は6歳で、とても愛想がいいらしい。
身につまされる話だった。
連絡先は聞いたの? オス? メス? 名前は?
矢継ぎ早に質問するも、ペンギンはわからないと首を傾げる。
一瞬、うちで引き取ってあげたら、という考えが頭をよぎった。
それが無理でも、おじいさんが困っている時、一時的に預かるとか、何か力になれることがあるかもしれない。
おじいさんも不安だろうけど、芝犬だって何かを察して、不安に感じているかもしれない。
せめて連絡先でもわかればと、わたしも、近所を歩くたびキョロキョロ見回しているけれど、それらしきおじいさんと犬の姿にはまだ出会えない。
いい里親が見つかって、早くおじいさんも芝犬も、安心して暮らせるようになればいいのだけど。
おじいさんと犬といえば、先日、近所に買い物に出かけたときのこと。
横断歩道を、白い犬がリードをぐいぐいと引っ張って、前へ前へと歩いている。
飼い主の男性は、完全に飼い犬に操られている格好だった。
ずいぶん躾のなっていない犬だなぁ、と遠くから呆れて見ていたら、なんのことはない、うちの犬だった。
さて、今わが家のブームは、『バビロン・ベルリン』だ。
これは、ドイツで製作されたテレビドラマシリーズで、莫大な製作費をかけ、壮大なスケールで作られたもの。
舞台となるのは、今からちょうど100年前に存在したワイマール共和国で、第一次大戦に敗れた後の1919年からナチスが台頭する1933年まで、14年間ドイツに存在した時代のお話だ。
当時もっとも進んでいたといわれるワイマール憲法のもとで、人々は自由を謳歌し、映画や演劇、ラジオなど、多くの文化が花開いた。バウハウスの誕生したのもこの時代。
ベルリンにはたくさんのカフェやキャバレーが誕生し、夜な夜な煌びやかなショーが開催され、ベルリンの黄金時代と言われている。
ストーリー展開も映像も破格というか掟破りで、度肝を抜く展開に、毎回ハラハラさせられる。
これがテレビで放送されたなんて、驚きもいいところだ。
間延びしていると感じさせる場面がどこにもなく、それでいて、その時代を包み込んでいた退廃的なムードが随所に表現され、キャバレーでのダンスのシーンも見応えがあり、映像も美しく、この外出自粛期間中家にこもって見るのにはうってつけだ。
舞台がベルリンなので、見覚えのある風景や建物、通りが出てくるのもたまらなく、この数日、やめられなくなってエピソード1と2を合わせて、合計16本を一気に見てしまった。
なんならもう一回最初から見てもいいくらい。
そして早く、エピソード3も見たい!
ナチスが台頭する前の時代にドイツで何が起きていたのか知るにはとてもいい作品で、ドラマとはいえ、社会的な背景などは、かなり史実に基づいて作られている気がする。
まだの方は、ぜひこの機会に。
おすすめです。