ペンギンと暮らす

夜明け

2019.11.06 Wed

初冬のベルリンへ。
すでに紅葉した葉っぱが地面に落ちて、色鮮やかなじゅうたんが広がっている。
あー、綺麗。
四方八方、どこに視線を送っても、そこには穏やかな美しさがある。

10月は、怒涛の一ヶ月だった。
仕事だけでも超のつくハードスケジュールだった上、私生活でもいろいろあった。
これまでの人生で、もっとも濃密な時間だったのは間違いない。
人生に、いきなり台風がやってきた。
でも、その目の中心にいたわたしは、案外、冷静だったかも。
ゆりねとも無事に合流を果たし、ひとまずホッとしている。

ゆりねの散歩がてら、近所のカフェでカプチーノを飲み、その帰り、ハム屋さんで新鮮な卵とチョコレートを買った。
それだけなのに、あ〜、なんて幸せなんだろう、とため息が出る。
道行く人たちが、みんなとは言えないけれど、笑顔なのがいい。
日本みたいに、眉間に皺を寄せて歩いている人は少ない気がする。

わたしは、よっぽどベルリンに恋をしているんだな。
好きで、好きで、仕方がない。

よく考えると、11月をベルリンで過ごすのは初めてだ。
去年も、一昨年も、この時期は日本に帰っていた。
ベルリンに長くいる人たちは、11月が辛い、と口を揃える。
まだ冬の入り口で出口が見えないし、12月はクリスマスが近づいて町全体が華やかになるけれど、11月はどんよりとした曇り空が続いて、雨も多いからだ。

確かに、こっちに戻ってから、毎日雨が続いている。
空は鉛色で、まるで大理石みたいだ。
どこまでも暗く、重たい雲が立ち込めている。

でも、そんな空がパーッと晴れて、一瞬だけれど青空が顔をのぞかせる時がある。
青空が窓の向こうに広がると、わーっと、歓声をあげたくなる。
あんまり綺麗で、知らない人ともハグをして、喜びを分かち合いたいような気分になる。
なんて美しい空なんだろう、とただただ口を開けてぽかんとする。
そして気がつくと、また、大理石の空に戻っている。
そんなことの、繰り返しだ。

今は、見るもの、聞くもの、触れるもの、すべてが新鮮。
今だけしか見えない景色、今だけしか聞こえない音、今だけしか触れない何か、そんなものを大切に大切にしたくなる。

そういえば、最近ずっと、赤いセーターを着ている。
冬をベルリンで過ごすようになってから、赤が好きになった。
灰色の冬景色の中に赤い色を見つけると、それだけで嬉しくなる。
こっちの人は、赤の使い方がとてもお上手。

もう、手袋やマフラー、帽子を身につけないと、寒くて外を歩けない。
でも、なんか幸せ。
11月のベルリンも、決して悪くない。
悪くないどころか、すごくいい。

冬時間に戻ったので、夜明けは今、6時過ぎくらいだ。
起きる頃、外はまだ真っ暗で、星が出ている。
あったかいお茶を飲みながら、静かに静かに夜明けを待つ。
なんて贅沢な時間なんだろう。
生きていることが、いとおしくなる。

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通りかかったアパートのドアがあまりにステキだったので.