ペンギンと暮らす

ひまわりの花

2019.09.12 Thu

明け方になると、ゆりねがわたしの布団に潜り込んでくる。
夏の暑い時期は、近寄りもしないくせに、ちょっと寒くなると、自分も入れてくれと要求するのだ。
ゆりねの温もりが愛おしくて、つい布団に長居してしまうから困るのだけど。
ぴったり寄り添って寝ていると、それだけでとても幸せな気持ちになる。
たまに、ぐぷぅ、ぐぷぅといびきが聞こえたりして。
ゆりねは、完全にわたしを枕だと思って、眠りこけている。

すごいなぁと感心するのは、一連のゆりねの行動が、全く同じように毎朝繰り返されること。
まず、布団に入れてと要求する時は、必ずわたしの右側に来る。
そして頭から入って、布団の中でくるっと向きを変え、わたしの右肩に頭をのせて眠る。
でも、寝ていると途中で暑くなるのか、必ずいきなり起きて、あちぃ、あちぃ、と訴えながらそこから場所を移動し、今度はおなかから下だけを布団に入れる形で眠る。
究極のルーティンで、決してイレギュラーな行動には出ない。
本人が考えてそうしているわけでもないだろうから、本能の要求に従った結果、無駄のない動きでそうなっているのだろう。
ゆりねが、わたしの左側に来て寝るということは、まずない。

二週間くらい前になるだろうか。
夜、ゆりねにおやつ(牛の皮を干したもの)をあげていて、かなり小さくなってからもそれをかじらせていたら、最後の固まりを、固いまま一気に飲み込んでしまった。
本当なら小さくなったら取り上げるべきなのに、なんとなく大丈夫そうだし、もったいない、と思ってわたしがそのままにしていたのだ。
そして、がぶりと飲み込む様子を、すぐ近くでとてもはっきり見ていた。

直後、ゆりねは苦しそうに走り回り、何度も嘔吐した。
嘔吐するのだけど、肝心な固まりは出てこなくて、ゼリー状の胃の粘膜みたいなのを大量に吐き出す。
もう完全に意識がもうろうとしている状態で、普段はそんな場所に行くことなどないのに、物陰の暗くて狭い場所に行きたがる。
それでも一箇所に落ち着いていることができず、夢遊病みたいに一晩中あっちに行ったりこっちに行ったり落ち着かなかった。

翌日も具合は良くならず、食いしん坊のゆりねが、食事を出しても口をつけない。
ぐったりして、まるで別犬になってしまい、さすがに怖くなって病院に駆け込んだのだった。
こういう時、そばにペンギンがいてくれて助かった。
自分ひとりだったら、怖くて耐えられなかった。

病院に行って、注射を2本打ってもらい、それでだいぶ元気を取り戻したものの、一時は最悪のことも頭をよぎった。
病院からの帰り道、さっそくゆりねが拾い食いしようとして、魚のしっぽを口にくわえていたのには、笑ったけど。
今回のことで、生きていることの素晴らしさを、ゆりねに教わった気がする。
ゆりねは食いしん坊なだけに、食べ物には本当に常に注意しないといけない。

先日、近所を歩いていたら、交差点の一角にたくさんの花が置かれていた。
家に帰ってインターネットで調べたら、反対車線から車が突っ込む交通事故があり、幼い子どもを含む4人が亡くなったという。
その場所は、ゆりねの散歩や買い物で毎日のように通っているし、自分が現場にいて事故に巻き込まれていても全然おかしくない。
近所の人も、みんなそう思って、献花に訪れているような気がした。
たくさんのひまわりの花、ぬいぐるみ、手紙、ろうそくの明かり。
以来、その場所を通るたびに、わたしはそっと手を合わせるようにしている。

この日記を書いていたら、夜空に月が浮かんできた。
今夜は、うりざね顔のお月様。
今、生きていること自体が奇跡的なことなのだと、ゆりねとひまわりの花を見て、そう思った。