ペンギンと暮らす

雨のラヴェンナ

2019.05.22 Wed

土曜日は一日フリーだったので、ボローニャから電車に乗って、ラヴェンナに行ってきた。
鈍行列車で一時間ちょっとの距離だけれど、車窓に広がる風景が、驚くほど山形に似ている。
向こうに小高い丘というか山が見え、手前には果樹園。
葡萄畑とさくらんぼ畑の違いはあるけれど、なんだかとてもホッとする景色だった。

その日は、朝からあいにくの雨。
空には重たい灰色の雲が立ち込め、大粒の雨がひっきりなしに窓ガラスを打ちつける。
だけどどうしても、ラヴェンナに行ってみたくなったのだ。
というのも、イタリアで『食堂かたつむり』が出版され、ほどなく文学祭へのお誘いをいただいたのがラヴェンナで、結局その話は実現しなかったのだけど、その時から私の頭にはRavennaという地名が刻まれ、いつか行ってみたいと思うようになった。

今回、ラヴェンナに行くつもりはなかったのだけど、ボローニャで開かれたNipPopのイベントで久しぶりに翻訳家のコーチさんとお会いし、コーチさんが手を挙げてくださったことでイタリアとの縁ができ、こうしてボローニャに来ることもできたのだと思ったら、なんだかラヴェンナに行ってみたいような気持ちになり、前の日の夜に必死に調べて、急遽、行くことにした。
せっかくイタリアにいるのだから、まだ行ったことのない土地を訪れたかったというのもあるし、単純に私はイタリアのタイルが好きなので、古いモザイク画に興味がある。
雨なので尻込みしてしまう自分もいたけれど、やっぱりせっかくボローニャからも日帰りで行ける距離なので、行かないのはもったいない。

まずは、駅前からタクシーに乗り、ラヴェンナの中心部からは少し離れた郊外にあるサンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂へ。
聖堂の中に入った瞬間から、あまりの美しさにめまいがする。
美しすぎて、ため息しかこぼれなかった。
これが、1500年も前に人間の手によって作られたとは!
人の偉大さを改めて思った。

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ラヴェンナは、今でこそ小さな町だけれど、かつて、5世紀から6世紀にかけては西ローマ帝国の首都として栄えた町で、町にはいたるところに、その頃建てられた建物が残されている。
教会の外はとても素朴な外観なのだけど、聖堂の中に一歩入ると、そこにはモザイクによる荘厳な壁画がある。
残念なのは、写真では決してその美しさが表現できないことで、光が当たった黄金の煌めきとか、やっぱり自分のこの目で見なければわからない。
外は雨だけど、それでも行って本当によかった。

お昼は、目星をつけていたトラットリアへ。
ラヴェンナはアドリア海に面しているので、肉だけでなく、海の幸も豊富だ。
少々時代遅れの英語のポップソングがかかっているような店だったけど、時間が経つにつれて、地元の人たちでいっぱいになり、厨房からは美味しそうな匂いが流れてくる。
お店のお姉さんに魚を使ったパスタのオススメを聞いたら、Cappelletti romagnoli を薦められた。これが、この地方の伝統的なパスタとのこと。
ちびちびと赤ワインを飲みながら、料理が来るのを待つ。

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Cappelletti は、帽子の形をしたパスタだった。
中にチーズとハムか何かが入っていて、そこに、魚で作ったラグーがかかっている。
味はまぁまぁ。
でも、まぁまぁの味も含めて、モザイク画と共に脳裏に刻まれるような気がする。
デザートにティラミスを食べ、再び雨の中、聖堂を巡る。
激しい雨の時は聖堂で雨宿りし、晴れたら移動を繰り返して、夕方までたっぷりとラヴェンナを堪能した。

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そういえば、私の台所にはイタリアの色ガラスで作ったタイルがはめ込まれているのだが、それはよくあるシート式のタイルではなく、職人さんが一枚一枚はめてくださったものだ。
そしてその職人さんは、もう二度とこんな大変な作業はやりたくない、と言ったとか。
見事なモザイク画を見ながら、これを作り上げた1500年前の人たちも、きっと同じように思いながら作業したのかな、などと想像した。
でも、その人たちに、1500年経ってもこうして人々が感動しているということを伝えてあげたいと思った。