ペンギンと暮らす

フジコさんと、桜の木の下で

2019.04.26 Fri

4月20(土)
「フジコさん」

ただいまドイツは、復活祭のため四連休。
土日を挟んだ、金曜と月曜がお休みになっている。
ということで、私はせっせと映画三昧だ。
『華氏119』『子どもが教えてくれたこと』『旅するダンボール』と立て続けにドキュメンタリー映画を見る。

今日見たのは、『フジコ・ヘミングの時間』。
フジコ・ヘミングさんがプロのピアニストとして活動できるようになったのは、人生の晩年を迎える頃から。
ピアノ教師だった母親から英才教育を受けるも、ピアニストになることはなかなか叶わなかった。
人生の半ばで、聴力を失うというアクシンデントにも見舞われた。
それが、深夜に放送された彼女のドキュメンタリー番組がきっかけで脚光を浴びるようになり、今は、世界中でコンサートを開いている。
実年齢は80歳を超えているけれど、本人は、「16歳くらいの気分よ」とのこと。
マネージャーはつけずに、全部ひとりで決めて、行動している。

たとえば、バイオリンやトランペットなど大方の楽器だったら、すべての癖を知り尽くした自らの楽器を持って演奏旅行に行ける。
けれど、ピアノの場合はそうはいかない。
その会場に用意された与えられたピアノで演奏をするしかない。
それは、想像以上に大変なことだ。

ブエノスアイレスで用意されていたピアノは、子どもが練習用に弾くようなピアノで、フジコさんの理想とする音色とは程遠かった。
それでも、すでにチケットを買って楽しみにしている人たちがいるし、代わりのピアノを用意するすることもできないとなると、その与えられたピアノで演奏するしかない。
フジコさんは、全く納得がいかない様子だった。
その日のために、練習に練習を重ねて、コンサートを迎えるのだ。
もしかすると多くの人には音の違いはわからないのかもしれない。
そんなの、どうでもいいと言う人だっているかもしれない。
でも、聞く人が聞いたらわかるし、そもそも、納得のできない楽器で演奏するというのは、フジコさんの本意ではない。
そのことに苦悶するフジコさんの姿がとても印象的だった。

フジコさんは、ベルリンで生まれた。
その後、母親の母国である日本に行くも、30歳で再びベルリンへ留学し、音楽を学ぶ。
今は、年の半分ほどをパリのアパートで過ごしている。
他にも、サンタモニカや京都に家がある。
ツアーでパリのアパートを長く留守にする時は、ベルリンの友人に犬を預かってもらっているそうで、映画には、ベルリンにある生家や学生時代の下宿先を訪れるシーンもある。

フジコさんの愛情の深さが、きっと音に表れるのだろう。
動物を愛して、人を愛して、命あるすべての者に惜しみなく愛情を注ぐ。
道端で出会うホームレスの人たちに、さりげなくお金を渡す姿が素敵だった。
きっと、ご自身が辛い経験をたくさんされたから、他者に対しても優しくなれるのだろうと思った。
フジコさんの演奏を聞いたのは一回しかないけれど、確かに素晴らしかった。
死にものぐるいで弾く、とフジコさんは語っていた。
まさに、その言葉通りの演奏だった。
いつか、ベルリンでもコンサートがあったらいいのにな。
生きていることの愛しさと素晴らしさを教えられた気がする。

それとは反対に、『華氏119』は、まさに憤りが炸裂するような内容だった。
この映画を制作したマイケル・ムーア氏に、心から感謝したい。
結局のところ、トランプ氏が大統領選に立候補したのは、単なる彼のおふざけだったのではないのか。
それを、面白おかしく報じて視聴率だけに目がくらんだメディアの責任も大きいし、民主党のやったこともはなはだおかしい。
フリント市で起きた水の汚染についても、ゾッとした。
経済を最優先した結果、ミシンガン州フリント市の水に鉛が混入し、多くの市民が体調不良を訴えるという事態になった。
水道水に鉛が入っているなんて、とんでもない話なのに、そんなとんでもないことが、先進国とされているはずのアメリカで実際に起きてしまうのだ。
世界中で、民主主義が機能しなくなっていることは、本当に本当に深刻な事態だと改めて思った。

さーて、今日はこれから市民農園に、野菜の種蒔きに行ってこよう。
本日も、晴天なり。

4月22日(月)
「桜の木の下で」

四連休の最終日。本日も、大晴天。
午前中は文庫のゲラを読み、その後、シャケと玄米を食べてから、12時スタートのホットヨガへ。
汗が出る、出る。
夏の間はサウナの昼の部がなくなるので、これからはせっせとホットヨガだ。
これで、肩凝りがだいぶ楽になる。

ホットヨガから帰ったら、あまりにお天気がいいので公園で過ごすことにした。
日本からまとめて送られてきた読者の方からのお手紙を持ち、公園へ。
おやつは、ホットヨガでもらってきたリンゴ。
池の前に敷物を広げ、手紙を読む。

本当に、一通一通が、心にしみる。
なんだか、読者の方と文通しているみたいだ。
ふと顔を上げれば、満開の八重桜の花びらがはらはらと散っていて、池のほとりには美しい鷺が佇んでいる。
皆さん、思い思いに日光浴やピクニックを楽しみ、途中、公園でトランペットの演奏をする人もいて、なんだかものすごーく平和だった。

今日いただいたお手紙の中に、こんなメッセージがあった。

「のんびりとしたペースで結構ですから、いい本をお書きになることを期待しております。」

涙が出そうになっちゃった。
読者の方からこんなに優しい言葉をもらえる私は、つくづく、恵まれている。
どのお手紙も、もちろん読者カードも、本当に励まされる。
本来ならお一人お一人にお返事を書きたいのだけど、それは現実的に難しいので、そういう気持ちを込めて、私は作品を書いているつもりだ。
いつも、温かく見守ってくださって、本当にありがとうございます!

今日はこれから、エビとマッシュルームのパスタを作って食べよう。
先日、公園で拾ったという銀杏をもらったのだけど、それがめちゃくちゃ美味しかった。

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ただ今ベルリンは花盛りだ。